トヨタの正念場を担うプリウスPHV:池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/3 ページ)
今年冬にトヨタが発売予定のプリウスPHVは、クルマとしての出来が優れている。だからこそ売らなくてはならない。特に北米市場においては失敗が許されない。そのわけとは……?
変わる北米のZEV規制
しかも、今回の改変では、ある意味トヨタ狙い撃ちのような規制変更が行われた。従来ZEVにカウントされていたプリウスがZEV枠から外された。ほとんんどプリウス名指しの規制である。2018年から実施される新しい規制では、実質的には電気自動車と燃料電池車だけがZEV枠としてカウントされることになった。PHVは準ZEV枠扱いとなり、一定のパーセンテージまでしかカウントされなくなった。
以下の一覧は2025年までの規制のロードマップで、左端がメーカーの全販売台数における環境対策車のトータル比率、カッコ内は左がZEV(電気自動車と燃料電池車)、右が準ZEVのプラグインハイブリッドとなる。
2018年 4.5%(2.0%・2.5%)
2019年 7.0%(4.0%・3.0%)
2020年 9.5%(6.0%・3.5%)
2021年 12.0%(8.0%・4.0%)
2022年 14.5%(10.0%・4.5%)
2023年 17.0%(12.0%・5.0%)
2024年 19.5%(14.0%・5.5%)
2025年 22.0%(16.0%・6.0%)
一応念のために書いておくが、電気自動車と燃料電池車のエミッションがゼロなのは走行時だけである。本来はWell to Wheelで見なければフェアとは言えない。直訳すれば「油井から車輪」。つまりエネルギーが作られる場所から最終的に消費される車輪までのトータルで考えるべきだ。電気自動車と燃料電池車に当てはめれば、電気や水素の作り方によってゼロになる場合は確かにある。しかし、ホントにゼロになるのはそのすべてが再生可能エネルギー由来である場合だけだ。遠い未来はともかく、現時点の話をすれば、この二形式だけを取りだしてZEVだと言うのは欺瞞(ぎまん)に近い。
本当に2025年までに22%(うち16.0%は電気自動車か燃料電池)を達成できるのかと言えば、それも甚だ疑わしい。日本では町と町はほとんどつながっており、おおむねどこにでも人が住んでいて、多くの人が移動するようなところは、たとえ都市間であってもそれなりにインフラが整備されている。そこにアドオンで電気自動車のインフラを普及させられる可能性はある。しかも、そもそもの走行距離が短い。
ところが、北米では自動車はインターステーツの移動手段だ。距離が長い上に、その間は沙漠や森林だったりと基礎的なインフラがない場所もある。さらに沙漠の真ん中の充電スタンドでのんびり1時間も充電することはセキュリティ的にも危ない。こういう土地柄で電気自動車を普及させるのは難しい。
日本国内に限れば、ギリギリ成立する日産リーフなどの短航続距離型電気自動車は、北米では航続距離の制約で都市間移動にはほぼ使えないので、都市内交通の専用機になってしまう。そういうインフラ環境を考慮したとき、PHVは給油さえできれば航続距離に制限がないことが美点になる。北米ではガソリンスタンドのインフラは完全に整備済みなので、はるかに現実的なはずだ。ところが、そういう現実的な選択肢が準ZEV扱いになっているわけだ。
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