マクドナルドが「使っている卵は100%国産」という謎アピールを始めた理由:スピン経済の歩き方(1/4 ページ)
業績が回復しつつあるマクドナルドが、謎なアピールをしている。店内のトレイマットに「使っている卵は100%国産です」などと書かれていて、これを見た筆者の窪田氏は「マクドナルドは迷走しているのではないか」と分析。なぜなら……。
スピン経済の歩き方:
日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。
「情報操作」というと日本ではネガティブなイメージが強いが、ビジネスにおいて自社の商品やサービスの優位性を顧客や社会に伝えるのは当然だ。裏を返せばヒットしている商品や成功している企業は「スピン」がうまく機能をしている、と言えるのかもしれない。
そこで、本連載では私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」を紐解いていきたい。
先日、急ぎでメールを送らなくてはいけない場面に遭遇し、近くにあったマクドナルドへ飛び込んだら、思わず二度見をしてしまうような斬新な広告に遭遇した。
トレイに敷かれたペーパー(トレイマット)にバーンと大きく卵の黄身があり、「100%国産卵」という刻印のようなロゴがのっけられ、こんな解説文が添えられているのだ。
「マクドナルドが使っている卵は、100%国産卵。キッチンでひとつずつ手で割っています」
正直、混乱した。メッセージの「真意」がよく分からなかったからだ。
世の中のほとんどの人からすると、卵といえば、「国産」というイメージが強い。一般の人からすると、当たり前のことを、異物混入騒動の記憶も新しい今、誇らしげにアピールをすれば、「そんな程度のことを偉そうに自慢するな」と逆に反感を買う可能性が高い。
実際、マクドナルドの公式Twitterアカウントを見ると、7月12日に『マックの卵、100%国産ってご存知でしたか?しかも、キッチンでひとつずつ手で割って使っているんです』とツイートしていて、たちまち「当たり前だと思っつていたのにドヤ顔されても」「国産じゃない卵探す方が大変だよね」という批判的なツッコミが殺到している。
ただ、よく見ると、このトレイマットの端っこには「配布期間8/30〜」とある。1カ月半以上前に一部消費者がSNSで違和感を表明しているにもかかわらず、こういうトレイマットをバラまき始めたということは、マクドナルド的にはこのメッセージがイケているという自負があるのだろう。
そこで調べてみると、「国産卵100%」というのは、マクドナルドの「100%のこだわり」という情報発信キャンペーンの一環だということが分かった。
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