「VRはゲーム業界“だけ”のものではない」開発者が語る課題と未来:東京ゲームショウ2016(2/2 ページ)
今年の東京ゲームショウで最も注目を集めた「VR(仮想現実)」。コンテンツメーカー、プラットフォーマ―から見た「VRの課題と可能性」とは? 基調講演のレポートをお届け。
開発していく上で見えてきた課題と可能性は?
ジャンルは“VR”とまとめられてはいるものの、どの会社も違った方面からVRゲームにチャレンジしている。開発していくうえで見えてきた課題点や、今後の可能性はどんなものだろうか。
「VRでさまざまなタイトルを制作していきたいが、まだ技術やノウハウが足りない。例えば“VR酔い(VRのプレイ中に酔ってしまい、体調不良になる)”の対策はなかなか難しい。ノウハウを積み上げて、最終的に開発しているタイトル全体に生かしたい」(伊集院さん)
「VR酔いについてはセガゲームスもいろいろと試行中。プレイヤーに能動的に行動させることが、VR酔いを軽減させるのでは……と考えている。臨場感は高めても、空気感を表現できるかのノウハウは途上。VR空間でしかできないようなことをもっと盛り込みたい」(林さん)
「ゲーム制作のノウハウはあるけれど、VR制作のノウハウは完成していない。一般のゲーム用に作られた描画や演算の仕組みを、VRのためにどうカスタマイズしていくか。どうチームづくりをしていくか。そして、完成したコンテンツを、どういう言葉や映像で伝えるのが一番届くのか――。2年間やってきて、だんだんノウハウがたまってきているところ」(玉置さん)
現在展開しているVRは、“1人で完成したコンテンツを楽しむ”というものが多い。しかし各開発者は、「体験共有」「VRゲーム内でのコミュニケーション」「プレイヤーの無意識化の行動にすら反応できるようになる」などのさらなる可能性を見いだしているようだ。
VRはゲーム業界だけのものではない
VRのソフトが急増したように、再生機にあたるヘッドマウントディスプレイも生まれている。そのうち多くのユーザーを獲得するとみられているのは、HTC Vive Pre、Oculus Rift VR 、PlayStation VRなど。また、FOVEの“視線追跡”など、独自の機能を売りにするディスプレイもある。
トークセッション第2部では、HTCバイスプレジデントのレイモンド・パオさん、FOVE最高技術責任者(CTO)ロクラン・ウィルソンさんが登壇。VRの発展可能性について語った。
「(イメージとしては)『マトリックス』の映画のようなものが必要。ハードウェアでもソフトウェアでも同じことだが、VRは複雑なシステムで、数多くのコンポーネントで作られている。CPUやディスプレイなどが分かりやすい例」(パオさん)
VRと聞くと、ゲーム業界だけの盛り上がりと考えてしまいがちだが、実は他分野に波及していく可能性がある。例えばかつてiPhoneの登場で日本製の部品工場が盛り上がったように、製造業にも大きな影響を与えるかもしれないのだ。そして、VRが活躍する舞台自体もゲームだけに限らない。
「ゲーム、教育、リハビリなど、VRはどこにでも使える。実用化され、みんなの生活の一部になる――そうした未来の実現には時間がかかるが、可能性の広がりは“私たちの意思次第”。イマジネーションがあれば現実化する」(ウィルソンさん)
「VRに制約があるとしたら、人々のイマジネーションによる。東京ゲームショウのような場で見られるので『VRといえばゲームなんでしょ』と思われるけれど、さまざまな使い方が考えられているし、用意されていて、だんだんと知られるようになっている」(パオさん)
海外VR企業の資金総額は、13年から15年の3年間に年平均約65%の成長を遂げているといわれている。日本はやや遅れをとっているが、PlayStation VRの登場で大きな変化が生まれた。今後の展開に注目だ。
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