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日本の鉄道史に残る改軌の偉業 北海道もチャンスかもしれない杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/4 ページ)

鉄道ファンならずとも、JR北海道の行く末を案じる人は多いだろう。安全を錦の御旗とし、資金不足を理由に不採算路線を切り離す。それは企業行動として正しい。そして再生へ向けて動き出そうというときに台風・豪雨被害に遭った。暗い話しか出てこないけれど、今こそ夢のある話をしたい。

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改軌された路線は意外と多い

 改軌工事は関東でも行われた。最も知られている事例は京急電鉄と京成電鉄だ。どちらも路面電車(軌道特許)で発足し、後に鉄道になった。京急電鉄の前身の大師電気鉄道は、川崎〜大森間を1435ミリメートルで開業し、2年後に1372ミリメートルに改軌している。これは品川への建設が決まり、品川で1372ミリメートルの東京市電と直通する目論見があったためだ。このときの改軌工事の距離は短い。しかし、次の改軌は大がかりだ。横浜まで延伸した本線をもう一度1435ミリメートルに戻した。

 大師電気鉄道は京浜電鉄として南へ延伸し、川崎、横浜へ到達する。

 ここで、さらに南へ、三浦半島方面の路線網を持つ湘南電鉄を子会社化、直通運転を決める。ただし湘南電鉄の軌間は1435ミリメートルだった。どちらかに統一しなければ直通できない。そこで京浜電鉄は、品川〜横浜間の22.2キロメートルを1372ミリメートルから1435ミリメートルに改軌した。近鉄名古屋線ほどではないけれど、これも英断だ。

 このとばっちりを受けた鉄道会社が京成電鉄である。京急電鉄と京成電鉄は、都営地下鉄浅草線を介して相互直通運転する計画に参加した。しかしこの時点で京成電鉄の軌間は1372ミリメートルだ。京成上野から京成成田の本線も、青戸から押上までの押上線も同じ。今だったら「軌間が違うから直通なんてできない」で諦めてしまうだろう。

 しかし、ここで京成電鉄は全線改軌を決断する。京急電鉄が2度も改軌していることもあって、都営地下鉄は京急に合わせた1435ミリメートルで建設されることになった。そこで、京成電鉄は、直通路線の押上線をはじめ、本線もすべて1372ミリメートルから1435ミリメートルに改軌した。本線は約60キロメートル、押上線は5.7キロメートル。合わせて支線の金町線、千葉線、関連会社の新京成電鉄まですべて改軌した。総距離は100キロメートルを超える。大変な事業だ。それでも、この改軌のおかげで成田スカイアクセス線の速度は向上し、スカイライナーは時速160キロメールを達成できた。

山形新幹線「つばさ」は、奥羽本線の福島〜山形間を改軌して実現した。後に新庄まで延長されている。この区間の普通列車も台車は新幹線用の線路に合わせた規格だ
山形新幹線「つばさ」は、奥羽本線の福島〜山形間を改軌して実現した。後に新庄まで延長されている。この区間の普通列車も台車は新幹線用の線路に合わせた規格だ

 このほかにも、軽便鉄道を改軌して普通鉄道になった路線は多い。近年では、奥羽本線や田沢湖線を改軌して、新在直通新幹線「つばさ」「こまち」を走らせた例もある。

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