「豊洲新市場はカジノにすればコスト削減になる」は本当か:スピン経済の歩き方(4/5 ページ)
10月9日号の『サンデー毎日』で、複数の大手流通企業やアミューズメント会社が「豊洲を買いたい」と名乗りを上げているという。「カジノは豊洲に誘致したらいい」という声も出ているが、本当にそれでいいのか。筆者の窪田氏は……。
「上客」をつかまえるために「IR」は有効な手段
なぜ日本では国際会議が開かれないのか。岩屋氏は「施設の規模」が見劣りしている可能性を指摘している。
例えば、都市の国際会議開催では世界7位にいるシンガポールには、1万1000人を収容する国際会議場があるのだが、「東京ビッグサイト」の収容人数は1000人。「パシフィコ横浜」でも5000人程度しかない。他国と比較してもスケールの小さは際立っている。
『マカオ、上海、ソウルなどと比較しても同様のことが言えます。東京ビッグサイトの規模は、2012年の世界ランキングでは68位(日本展示会協会)でしかありません。アジアだけではなく世界中で大規模な展示場や会議場が続々とつくられていっている中で、このポジションはさらに低下していくと予想されます』(「カジノ法」の真意)
じゃあ、「上客」をつかまえるために他国並の施設をつくればいいと思うかもしれないが、五輪施設でこれだけ揉(も)めている中で、公費を投入して巨大なハコモノなどつくれるわけがない。そういうときこそ、民間の活力だと軽く言う人もいるが、日本中でハコモノが赤字経営をしている中で、「東京ビッグサイト」の10倍規模のプロジェクトに手を挙げる酔狂な企業はない。
そこで、「IR」だ。
IRは全施設面積の5%程度であるカジノフロアの収益によって、施設全体の運営費をサポートできる。だから、IRを導入している国では、日本国内ではありえないような巨大施設をつくりだすことができるのだ。事実、先ほど紹介したシンガポールの1万1000人規模の国際会議場があるのは、マリーナ ベイ サンズ。日本人観光客も多く訪れる屋上に舟が乗ったような形の巨大IRだ。
つまり、「公費を投入した巨大ハコモノ」をつくることができなくなった日本において、諸外国との観光誘致競争で勝ち抜いて「上客」をつかまえるためには、「IR」は非常に有効な手段なのだ。
それこそが、岩屋氏がIRのことを「観光産業のエンジン」と呼ぶ所以(ゆえん)だ。
関連記事
- 「石原さとみの眉が細くなったら日本は危ない」は本当か
女優・石原さとみさんの眉がどんどん細くなっている。彼女のファンからは「そんなのどーでもいいことでしょ」といった声が飛んできそうだが、筆者の窪田さんは「日本経済にとって深刻な事態」という。なぜなら……。 - 「着物業界」が衰退したのはなぜか? 「伝統と書いてボッタクリと読む」世界
訪日観光客の間で「着物」がブームとなっている。売り上げが低迷している着物業界にとっては千載一遇かもしれないが、浮かれていられない「不都合な真実」があるのではないだろうか。それは……。 - 「日本は世界で人気」なのに、外国人観光客数ランキングが「26位」の理由
日本政府観光局によると、2014年に日本を訪れた外国人観光客は2年連続で過去最高を更新した。テレビを見ると「日本はスゴい」などと報じているが、国別ランキングをみると、日本は「26位」。なぜ外国人たちは日本に訪れないのか。その理由は……。 - 「LEDよりも省エネで明るい」という次世代照明がなかなかブレイクしない理由
「CCFL(冷陰極管)」という照明をご存じだろうか。LED照明にも負けない省エネで低価格な製品だが、筆者の窪田氏は爆発的な普及は難しいという。なぜなら……。 - ファミレスでタダでバラまく新聞が、「軽減税率適用」を求める理由
ホテルやファミレスなどで新聞が無料で配られているのにも関わらず、読んだことがない人も多いのでは。大量の新聞紙が「刷られて、運ばれて、廃棄されて」いるわけだが、筆者の窪田氏はあることにスッキリしないという。それは……。 - なぜ日本人はウイスキーを「水割り」で飲むのか?
ドラマ『マッサン』効果でウイスキー市場が盛り上がっている。各社の売り上げが伸びている一方で、気になることも。それは「水割り」。海外の人たちは「ストレート」や「ロック」で飲んでいるのに、なぜ日本人の多くは水割りを好むのか。その理由は……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.