新卒一括採用が「若き老害」を生み出している:常見陽平の「若き老害」論(1/3 ページ)
常見陽平が職場にはびこる「若き老害」という現象を全6回で読み解くシリーズ。第3回は新卒一括採用によって「○年入社組の同期」というものを作り出すシステムが、「若き老害」の誕生を助長している……という話。
この連載について:
老害とはなんだろうか。辞書には、「企業や政党などで、中心人物が高齢化しても実権を握りつづけ、若返りが行われていない状態」とある。
では、老害とは具体的に、何歳くらいの人のことを言うのだろうか?職場の年齢構成、世代間の差、人材マネジメント方針、価値観などの変化から、「老害の若年化」ともいえる奇妙な状態が起きている。トライブ間の格差が顕在化しているのである。
そこには、バブル対ロスジェネ対ゆとりというような単純なものではない、抗争がある。これは単なる世代闘争ではない。若き老害族とそれ以外との闘いなのだ。
職場で話題になる「○年入社組」問題
日本人は「○年組」というくくりが大好きだ。アイドルの世界では、「花の1982年組」という言葉がある。松本伊代さん、堀ちえみさん、三田寛子さん、小泉今日子さん、石川秀美さん、早見優さん、中森明菜さん、伊藤さやかさん――などがデビューした。また、宇多田ヒカルさん、椎名林檎さん、aikoさん、浜崎あゆみさん、MISIAさん――など大型新人が多数デビューした年は日本人女性ボーカリスト界で「花の1998年組」と言われた。
しかし、私たちがこの「○年組」という表現をよく耳にするのは、むしろ企業においてである。最近では、西暦の桁を利用し「イチロク組(2016年入社)」のように呼ばれることもある。
10月、企業では内定式が開かれる。今年は1日が土曜日なので、3日の月曜日に開いた企業も多かったようだ。新卒一括採用という慣行のある我が国らしい光景である。この慣行もまた「若き老害」(20代後半〜30代前半で老害化している社員のこと)を生み出す原因の一つである。「○年入社組の同期」を作り出すこのシステムが、「若き老害」の誕生を助長しているのだ。
新卒一括採用というこの慣行自体、定義が揺らぎつつあり、対象も多様化しているのだが、基本的には未経験の新卒者を定期的に組織に迎え入れる行為のことを指す。毎年、一定の時期に社員が入社してくるが故に、「○年入社組」という表現が生まれる。
よく批判される新卒一括採用だが、一定の時期に人をまとめて採用し、トレーニングできるという意味で合理性がある。企業の文化に染めやすいのもメリットだ。
また、都度スポットで採用するよりも、数十人、数百人とまとめて採用するが故に同期内で多様性が生まれやすい。「何人かは変わり者をとっておけ」「あまり賢くなくてもガッツだけで勝負するタイプも入れておこう」という話になるからである。
「同期」が形成されるのも、この慣行の特徴だ。同期内での仲間意識と競争が促される。その企業に内定した時点から、内定者の研修や懇親会などが多数開催され、同期意識が醸成される。
このように、新卒一括採用は同期というつながりをつくる慣行だとも言えるのだ。
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