なぜ大阪府警の機動隊は「土人」などと暴言を吐いたのか:スピン経済の歩き方(5/5 ページ)
沖縄のヘリコプター離着陸帯(ヘリパッド)移設工事を巡って、現場を警備する大阪府警の機動隊員が「暴言」を吐いた。反対運動をしている人に「どこつかんどんじゃ、ぼけ。土人が」などと発言したわけだが、なぜ彼らはこのような暴言を吐いたのか。その理由を探ってみると……。
10月22日、国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」が、沖縄における報道の自由侵害を懸念する声明を発表、高江の抗議運動を取材していた『沖縄タイムス』と『琉球新報』の記者が拘束されたことを「危険な先例」として非難した。「土人」発言に畳み掛けるような絶妙なタイミングだ。
基地反対運動というのはどんなに座り込みを続けても、結局は為政者側の「実力行使」で鎮圧されてしまう、という厳しい現実がある。そこで、「基地問題=重大な人権蹂躙」という構図をつくって、国際世論を動かすという「出口戦略」へと徐々に移行していけるかが勝敗を分ける。
相手がカメラを持っているにもかかわらずあのような暴言が飛び出るというのは、応援に来た他県の機動隊員たちの士気が著しく落ちている証だ。このまま高江に居座り続けたところで、活動家のみなさんの「挑発的態度」に疲弊して、同様の失態を招く可能性は高い。
当然、反対派はそれを狙っている。政府もそれを分からないわけがない。それでもなお機動隊を対峙させ続けるのか、それとも――。両者の次の一手に注目したい。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで100件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
著書は日本の政治や企業の広報戦略をテーマにした『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
関連記事
- 日本のおじさんたちが、「アデランス」をかぶらなくなったワケ
アデランスがMBOを実施すると発表した。投資ファンドからの支援を受けながら経営再建を目指していくそうだが、業績低迷の背景に一体何があったのか。日本のおじさんたちが「かつら」をかぶらなくなった……!? - 日本人、それってオカシイよ 「過労死」を生む日本企業の“常識”
過労死の問題が話題になっている。この問題に対して、海外メディアはどのように報じているのか。「労働時間」「残業」「休暇の取得」などは常識の範囲内で行っているつもりかもしれないが、外国人からは“非常識”に映っているようだ。 - 電通や東芝といった大企業が、「軍隊化」してしまうワケ
電通の女性新入社員が「過労自殺」したことを受け、「オレの時代はもっと大変だった。いまの若い者は我慢が足りない」と思った人もいるだろう。上の世代にとっては“常識”かもしれないが、なぜそのような考え方をしてしまうのか。 - 「石原さとみの眉が細くなったら日本は危ない」は本当か
女優・石原さとみさんの眉がどんどん細くなっている。彼女のファンからは「そんなのどーでもいいことでしょ」といった声が飛んできそうだが、筆者の窪田さんは「日本経済にとって深刻な事態」という。なぜなら……。 - 「着物業界」が衰退したのはなぜか? 「伝統と書いてボッタクリと読む」世界
訪日観光客の間で「着物」がブームとなっている。売り上げが低迷している着物業界にとっては千載一遇かもしれないが、浮かれていられない「不都合な真実」があるのではないだろうか。それは……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.