日本に「ハロウィン」を定着させた「仕掛け人」は誰か:スピン経済の歩き方(5/5 ページ)
今年も大盛況の中で「ハロウィン」が幕を閉じた。オジさんたちから「我々が若かったころは、こんなイベントなかったよなあ」といった声が聞こえてきそうだが、実は40年ほど前から行われていたのだ。仕掛け人は広告代理店でなく……。
日本で「ボスデー」が定着する日
日本の「ブーム」や「流行」をすべて取り仕切っている、と言われる電通では、女性社員が「過労自殺」をしたことからも分かるように、「部長、いつもありがとうございます」なんて呑気に花を贈れるような労働環境ではない。
それは他の企業も同様だ。「パワハラ」や「社内いじめ」のニュースが火災や交通事故のように日常的に報じられる今の日本社会で、「オフィス版バレンタインデー」が普及できるだろうか。できないだろうなあやっぱり。
そこで提案だが、「ボスデー」の意味をガラッと変えてみてはどうだろう。この日ばかりは普段は絶対に口にできないような上司への不満、弱音、SOSを口にする。上司側はそれを甘えだとか、なんだと反論をせずに真摯(しんし)に受け止める。
「部長、あなたのやっていることはパワハラです」
「もう限界です。このままいったら自分、どうなるか分かりません」
そうして自分の心情を赤裸々にぶちまけた勢いで今の「ハロウィン」ばりに、街で仮装パレードでもして大騒ぎをすればいい。「パワハラやめないと、いたずらしちゃうぞ」とか言って。
「ふざけてる」「バッカじゃないの」と思う人もいるかもしれないが、大真面目だ。ここまでパワハラや過労死が問題になるのは、日本人がまじめ過ぎるからだ。そういう国民に必要なのは、上司へ日頃の感謝を伝えようなどという建前的なイベントではなく、不平不満を吐き出させるイベントなのではないのか。
「ボスデー」がすたれて、「ハロウィン」というお祭り騒ぎが定着したのはその証である。大手百貨店や広告代理店のみなさん、いかがでしょう。きっと盛り上がりますよ。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで100件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
著書は日本の政治や企業の広報戦略をテーマにした『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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