ご当地フィギュア「諏訪姫」シリーズが、20万体超のヒットとなった理由:スピン経済の歩き方(4/5 ページ)
長野県諏訪市公認のご当地萌えキャラ「諏訪姫」が売れている。デビューから4年が経っているのに、いまだに人気があって、フィギュアの販売個数は20万個を突破。全国的にみると、ご当地萌えキャラは苦戦しているのに、なぜ諏訪姫は多くの人から愛されているのか。
「諏訪姫」が売れている理由
「諏訪姫」が広告代理店やキャラクタービジネスの観点で生み出された「萌えキャラ」ではないことは分かったが、それのどこが「諏訪姫」の好調さの理由につながるのだ、と首をかしげる方も多いかもしれないが、大いに関係がある。
全国で推計3000にものぼるという「ゆるキャラ」の現状を見れば分かるように、地域活性化や町おこしを「目的」として生まれたキャラクターたちの多くは、「経営」の視点がごそっと抜け落ちている。
例えば、『北海道新聞』(2016年10月26日)によると、道交通政策局の北海道新幹線をPRする「どこでもユキちゃん」は15年度に223日間稼働したが、航空局が手がけた道内空港をPRする「きたぴょん」はわずか31日。北海道知事が「どこのキャラクター?」と口をすべらすほどマイナーな存在となっている。
財務省が2014年度に「稼働日数が少ないものは、廃止も含めた抜本的な見直しを行うべきだ」と改善を求めたように、多くの「ゆるキャラ」が赤字企業化しているのは、「PR」や「地域振興」という効果測定が難しいものを「目的」と設定していることが大きい。テレビに何秒映ったとか、取材に何社訪れたとかがKPIになるので、とにかく「目立つゆるキャラをつくる」ということが「目的化」する。そのため、「人々に長く愛される」とか、「事業として継続させる」という発想が欠如してしまうのだ。
これは「ご当地萌えキャラ」にもあてはまる。とにかく「目立つ」という結果が優先されるので、巨乳キャラはより巨乳を強調し、海女のキャラは肌の露出を多くしなくてはいけなくなる。
だが、「諏訪姫」は違う。これは観光PRや地域振興のために生まれたのではなく、ピーエムオフィスエーの新規事業だ。そこには、従業員20名の生活や人生がある。
だから、「目立つ」こと以上に市場に受け入れられ、顧客を獲得し、事業として継続させることが求められる。フィギュアとしての完成度、キャラクターとしての魅力、ブランドの世界観……販売目標というKPIに基づき、「売れるキャラクター」を必死につくり上げる。
その試行錯誤が先の『読売新聞』にある。山口社長によると、『当初、全国展開を目指した商品は売れなかった。そこで、地元の諏訪で愛されるようにと方針転換』したという。
関連記事
- 日本のおじさんたちが、「アデランス」をかぶらなくなったワケ
アデランスがMBOを実施すると発表した。投資ファンドからの支援を受けながら経営再建を目指していくそうだが、業績低迷の背景に一体何があったのか。日本のおじさんたちが「かつら」をかぶらなくなった……!? - 日本人、それってオカシイよ 「過労死」を生む日本企業の“常識”
過労死の問題が話題になっている。この問題に対して、海外メディアはどのように報じているのか。「労働時間」「残業」「休暇の取得」などは常識の範囲内で行っているつもりかもしれないが、外国人からは“非常識”に映っているようだ。 - 電通や東芝といった大企業が、「軍隊化」してしまうワケ
電通の女性新入社員が「過労自殺」したことを受け、「オレの時代はもっと大変だった。いまの若い者は我慢が足りない」と思った人もいるだろう。上の世代にとっては“常識”かもしれないが、なぜそのような考え方をしてしまうのか。 - 「石原さとみの眉が細くなったら日本は危ない」は本当か
女優・石原さとみさんの眉がどんどん細くなっている。彼女のファンからは「そんなのどーでもいいことでしょ」といった声が飛んできそうだが、筆者の窪田さんは「日本経済にとって深刻な事態」という。なぜなら……。 - 「着物業界」が衰退したのはなぜか? 「伝統と書いてボッタクリと読む」世界
訪日観光客の間で「着物」がブームとなっている。売り上げが低迷している着物業界にとっては千載一遇かもしれないが、浮かれていられない「不都合な真実」があるのではないだろうか。それは……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.