ご当地フィギュア「諏訪姫」シリーズが、20万体超のヒットとなった理由:スピン経済の歩き方(5/5 ページ)
長野県諏訪市公認のご当地萌えキャラ「諏訪姫」が売れている。デビューから4年が経っているのに、いまだに人気があって、フィギュアの販売個数は20万個を突破。全国的にみると、ご当地萌えキャラは苦戦しているのに、なぜ諏訪姫は多くの人から愛されているのか。
「ゆるキャラ」にも必要な視点
こういう試行錯誤は残念ながら、役所の人間には難しい。担当や部署がコロコロ変わるという組織の都合上、中長期的な事業計画を進めることができないのだ。だから、とにかくてっとり早く「結果」の出る施策に飛びつく。「ゆるキャラ」とか「萌えキャラ」はとにかくつくって活動をすれば、それが役所内の人事評価になる。最近多い有名人を起用した「地方PR動画」なんかもこれにあたる。
役所にはない「事業」という発想があって、実際に継続させている――。「ご当地萌えキャラ」逆風の中で「諏訪姫」が4年以上も活躍できている最大の理由はそこにあるような気がしている。
先日、四国初の開催となった「ゆるキャラグランプリ」では、高知県須崎市の「しんじょう君」が見事グランプリに輝いた。昨年、静岡県浜松市で開催されたときは、地元・浜松の「出世大名家康くん」がグランプリに輝いた。この傾向を見る限り、これからは開催地エリアの「ゆるキャラ」が持ち回りで優勝していく「ゆるキャラ業界の懇親会」のようになってしまうのではないかと不安になってくる。
競争のなき世界で、人々の心をつかむキャラが生まれるとは到底思えない。そろそろ「ゆるキャラ」にも「経営」の感覚が必要なのではないか。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで100件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
著書は日本の政治や企業の広報戦略をテーマにした『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
関連記事
- 日本のおじさんたちが、「アデランス」をかぶらなくなったワケ
アデランスがMBOを実施すると発表した。投資ファンドからの支援を受けながら経営再建を目指していくそうだが、業績低迷の背景に一体何があったのか。日本のおじさんたちが「かつら」をかぶらなくなった……!? - 日本人、それってオカシイよ 「過労死」を生む日本企業の“常識”
過労死の問題が話題になっている。この問題に対して、海外メディアはどのように報じているのか。「労働時間」「残業」「休暇の取得」などは常識の範囲内で行っているつもりかもしれないが、外国人からは“非常識”に映っているようだ。 - 電通や東芝といった大企業が、「軍隊化」してしまうワケ
電通の女性新入社員が「過労自殺」したことを受け、「オレの時代はもっと大変だった。いまの若い者は我慢が足りない」と思った人もいるだろう。上の世代にとっては“常識”かもしれないが、なぜそのような考え方をしてしまうのか。 - 「石原さとみの眉が細くなったら日本は危ない」は本当か
女優・石原さとみさんの眉がどんどん細くなっている。彼女のファンからは「そんなのどーでもいいことでしょ」といった声が飛んできそうだが、筆者の窪田さんは「日本経済にとって深刻な事態」という。なぜなら……。 - 「着物業界」が衰退したのはなぜか? 「伝統と書いてボッタクリと読む」世界
訪日観光客の間で「着物」がブームとなっている。売り上げが低迷している着物業界にとっては千載一遇かもしれないが、浮かれていられない「不都合な真実」があるのではないだろうか。それは……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.