「町自体を実験フィールドに」 IoTで市民の健康データを取得 会津若松市
福島県会津若松市がヘルスケア分野でIoTを活用する実証実験を開始。「IoTを活用したスマートシティを推進し、地方創生のモデル都市となることを目指す」という。
福島県会津若松市はこのほど、ヘルスケア分野でIoTを活用したプラットフォーム事業の実証実験を開始したと発表した。スマートフォンアプリやウェアラブル端末で取得した市民の健康データを活用し、新サービス創出や医療費削減などに生かす考えだ。
アクセンチュア、インテル、損保ジャパン日本興亜ひまわり生命、会津大学、会津中央病院など、産・官・学・医が連携。各企業・機関のサービスを通じて取得した市民の健康データを「ヘルスケアIoT基盤」に集約してオープンデータ化し、そのデータを活用した新サービス創出、雇用創出、生活習慣病の予防を後押しする。
今年度に募集するモニターは100人。気になる症状などを登録することで自身の健康状態に合わせた献立を作成してくれる「おいしい健康 Webサービス」や、スマートウォッチなどから取得した生体データ(心拍数、歩数、移動距離、消費カロリー)を確認できるサービスなどを通じて、モニターの健康データを収集する。
各種サービスは同市が運営するのポータルサイト「会津若松プラス」上に集約。モニターは同サイトからサービスの利用や、自身の健康情報を閲覧することができる。
来年度からモニターを1000人規模に増やし、より多くのデータを集めていく。3年をめどに、地元企業の社員食堂や弁当店、スーパーなどと連携し、利用者の健康データに基づいた献立を提案したり、数年先の健康リスクを分析して健康指導を実施するなどのサービス創出につなげていく。また、20年までに、実用化したサービスの全国展開も視野に入れている。
同市の室井照平市長は「町自体を実証実験のフィールドにすることで、全国に先駆けて先進的なデータ活用、新サービスの創出を実現していきたい。すぐに成果は出ないと思うが、いずれこの取り組みが“地方創生のカギ”になる」と話している。
同市の人口は約12万。95年をピークに人口が減少し、20年後には約10万人にまで減少すると推計されている。高齢化率も高まっており、医療費の抑制や若者の県外流出を抑えるための雇用創出が課題となっていた。今回のプロジェクトを通じて、「健康促進だけでなく、データサイエンティストなどの雇用の受け皿を作っていきたい」(室井照平市長)としている。
「会津若松市は地方都市として典型的な課題を抱えている。スマートシティを推進する実証地域として地方創生のモデル都市となることを目指したい」(同)
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