「ヌーハラ報道」に、目くじらを立てる理由:スピン経済の歩き方(3/5 ページ)
少し前、日本人がラーメンなどをすする際の音で外国人が不快な思いをするという「ヌードルハラスメント」(ヌーハラ)が注目を集めた。テレビや新聞などがこの騒動を報じたわけだが、筆者の窪田氏は「報じてはいけない」という。なぜなら……。
「ヌーハラ報道」に目くじらを立てる理由
確かにヌーハラなんてネタに釣られるテレビも問題だけど、そこまで目くじらたてなくてもいいんじゃないの」と言う方もいらっしゃるかもしれないが、目くじらをたてる必要がある。
「外国人」という反論の場が極端に少ないマイノリティが、今回のように人々の「怒り」や「不快感」を煽るような「風説」に登場すると、排斥運動、あるいは暴行などの事件を招くという「悲劇」が世界中で確認されているからだ。
例えば、グアテマラにトドス・サントス・クチュマタンという町がある。民族衣装が有名で外国人観光客も多く、のどかな町で治安もいい。しかし、2000年に現地を訪れた日本人旅行者が暴行されて亡くなった。これは「現地の新聞が外国人が子供をさらいに来るとのうわさがあったと報じている」(毎日新聞 2000年5月1日)ことが大きく影響している。グアテマラでは1990年代から一部極右勢力が意図的に「臓器売買目的で外国人が子供を誘拐する」という風説を流していた。それを真に受けた人々が時折、外国人観光客を襲撃するという事件が起きていたのだ。
つまり、今回のように「ほとんどの外国人は日本の食文化をバカにしている」という「うわさ」をテレビがあたかも事実のように報じてしまったら、それを真に受けた一部の方たちによって、外国人への排斥運動や、暴行事件が引き起こされてしまう可能性もあるのだ。
バカを言え、日本人は東日本大震災でも「デマ」にう呑みにせず助け合い、略奪も暴動もなかった世界一良識のある民族だ、そんな野蛮な真似をするわけがないだろ、という愛国心溢れる方たちからのお叱りの言葉が聞こえてきそうだが、過去に遡(さかのぼ)ればわが国でもそういう悲劇はわりとよく起こっている。
例えば1993年春、福岡市で外国人の方たちが「日本から出ていけ」と若者の集団に襲われたり、「外人は帰れ」と怒鳴られるという事件が多発した。ああ、福岡は例の国の人が多いからね、と思う方も多いかもしれないが、被害者の多くはオーストラリア、英国、米国の方だった。
通りすがりの若い男性2人に罵られた米国人の女性は、「知り合いの米国人男性は町でいきなり酔っ払いに殴られ、その後帰国した。日本でこんな差別を受けるとは思わなかった」(西日本新聞 1993年6月27日)とかなりショックを受けた。
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