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人工知能に「仕事を奪われない」働き方はある?2030年のキャリアはどうなる

リクルートワークス研究所が、日本の労働市場シミュレーションの結果を発表。ビジネスパーソンがキャリアを構築するための取り組み方を提案した。

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 現在、人工知能(AI)、ロボット、IoT(モノのインターネット)などのテクノロジーが急速に発展している――。今後これらのテクノロジーは、徐々に人間の仕事を置き換えていくと考えられている。昨年、野村総合研究所が「10〜20年後、日本の労働人口の約半分がAIやロボットで代替される」との研究結果を発表し、オペレーター職や事務職などがなくなる可能性を指摘していた。

 では、テクノロジーが社会を大きく変えたとしても、日本のビジネスパーソンが職を失うことなく活躍し続けるには、何が必要なのか。リクルートワークス研究所が2030年の日本の労働市場をシミュレーションし、結果をふまえて「新しい働き方」を提示した。

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リクルートワークスが提唱する「Work Model 2030」

 シミュレーション結果によると、テクノロジーの進歩の影響によって、2030年には25〜59歳の就職率が約5%低下するほか、平均年収が現在から約40万円減となる289.1万円になる危険性があるという。

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シミュレーションの結果

 その背景にあるのは、日本人特有の働き方だ。海外との比較調査では、日本人は他国と比較して、「海外展開を目指すのではなく、地域に根差したビジネスを行いたい」と考える人が多かった。また、「自社でこそ生かせるスキル」と「どの会社でも生かせるスキル」のどちらでもない「“やや”汎用性のあるスキル」を持つ人が多かったという。

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海外との比較調査の結果

 このようなスキルセットでは、企業寿命の短縮や職種の減少により、「企業に長期間在籍し、そのなかでキャリアを積む」という従来のパターンが一般的でなくなった場合、「柔軟な価値観をもとに他社・他業種でスキルを発揮したり、海外に進出したりといった方針転換が難しい」と調査を担当した中村天江さんは指摘する。

 どのような状況下でも通用する人材になるためには、「どの分野で稼ぐか」「専門性をどう生かすか」「どう働くか」を明確にしてスキルの獲得に専念し、“その人ならでは”の付加価値を高めることが大切だとみている。

 立場別では、営業活動やサービス提供に取り組む現場人材は、AIを活用してルーティンワークを自動化し、定型業務の効率化をはかるスキルを磨くことを推奨している。一方、調整能力に長けたマネジメント人材は、VR(仮想現実)・AR(拡張現実)を導入した会議システム開発や、クラウドでの資金獲得など、テクノロジーを活用した管理スキルの向上が必要だとしている。

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今後のビジネスパーソン像

 そして、スキルを身に着けた後に次のステージに移行する際は、状況をふまえて国内と海外、現場側とマネジメント側、会社員とフリーランスの間で柔軟に立場を変え、流動的にキャリアを構築していくべきだという。

 「日本は他国よりも転職によって賃金が上昇する可能性が低いため、独立して所得を上げることを視野に入れるべき。ビジネスパーソンは個々のスキルを磨き、『自分のキャリアは自分で決める』という意識を持つことが重要」(中村さん)

 例えば、「プログラミング」という専門性を持つ人材が、大手企業でエンジニアとして経験を積んだのち、ベンチャー企業でデータサイエンティストやアナリストへと職種を変えつつ活躍。その後フリーランスに転向して成果を上げ、最終的には運営側のCTOとして組織に戻るキャリアパスなどが理想だとしている。

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リクルートワークスが提唱するキャリアパス

 ただ、現在の日本では、フリーランスへの転向や起業を行う人は少数派だ。しかし、意識や仕組みが改善され、立場や働き方を柔軟に変えながらキャリアアップする動きが一般的になれば、2030年には日本の就業率は4%向上し、平均年収は約60万円の増加が見込めるという。

 ビジネスパーソンは自らの強みを磨き、「雇われない働き方」も含めたさまざまなキャリアプランを選択肢に入れることが必要なのかもしれない。

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今後考えられるフリーランサーのキャリアパス

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