“小さな高級車”幻想に挑むデミオとCX-3:池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/4 ページ)
マツダがデミオとCX-3の商品改良を行った。改良ポイントは大きく3つあるが、そもそもCX-3は単純にデミオのコンポーネンツを使っているというだけでなく、ボディも共用している。SUVでありながら室内高はデミオと変わらない。なぜそうしたクルマが作られたのだろうか?
このたびマツダがデミオとCX-3の商品改良を行った。既に何度か書いているが、マツダは従来のマイナーチェンジを商品改良と呼ぶように変えた。販売のテコ入れのために商品をリフレッシュして新車効果を狙うマイナーチェンジと一線を画して、顧客のために商品改良を行うからだと言うのだ。
3つの改良ポイント
さて、ではその顧客のためにクルマがどう変わったかが問題なのだが、大きく分けて3つある。
1つは、ぶつからないブレーキの進歩。歩行者が検知できるようになったこと、さらに従来は時速30キロまでしか作動しなかった自動ブレーキが時速80キロまで作動するようになった。このあたりは、時代に即した進歩である。正直な感想とすれば、スバルあたりはとっくにやっていた技術で、他社を突き放すというより、後れを取らないようにする技術である。これが今回採用されたことは高く評価するが、同クラスをリードする他社のライバル車との比較としてはアドバンテージにはなるものではない。
2つ目は地味だが大事なことだ。Gベクタリングコントロールの採用。これは説明するとどこまでも長くなる技術なので詳しくは過去の記事を読んでいただくとして、要するに人がクルマを運転しやすくなる技術だ。従来より自分の思うようにクルマを動かすことができ、操作に無駄が生じない分、運転が楽だというもの。ユーザーにとっては、Gベクタリングコントロールのありなしを比較する機会が皆無なので、なかなか分かりにくいが、ロングドライブでの疲労はかなり違ってくるはず。地味ながら近年のマツダの技術の中でも特筆に値するものだと思う。
3つ目は、デザインの高級化だ。もちろん一部グレードに限られるが、ナッパレザーを使うなどしてクラスレスの高級感を醸成することを目指した。
デミオとCX-3の成り立ち
さて、こうした改良はどういうことか。ここからが本題だ。まずはデミオとCX-3の関係から。CX-3はデミオのSUVである、と書くとマツダの人は「SUVではなくクロスオーバーです」と言うので大変面倒くさい。またそれがまったく意味のない指摘でもないところがより面倒なのだ。そこは後述する。
CX-3は単純にデミオのコンポーネンツを使っているというだけでなく、ボディも共用している。SUVでありながら室内高はデミオと変わらない。車高の違いは完全にサスペンションとタイヤによるものだ。
そういうクルマがなぜ作られたのかというところに本質がある。デミオはBセグメントのクルマだ。Bセグメントは各社が確実にラインアップしているクルマとして最小のクルマだ。グローバルで見たときに、このBセグメントのクルマは新興国用と先進国用に分かれている。新興国では安くてボディが大きく、大勢で乗れることが重視される。しかし先進国では大きいクルマの扱い難さをよく知る顧客が、絶対的な安さではなくコンパクトであることに価値を見出して選ぶクラスである。デミオはその後ろ下がりのルーフやリヤシートのサイズから見て、明らかに先進国用の高付加価値型Bセグメントになっている。
コンパクトでありながら、いかに高級感や上質感を持たせるかが商品力の重要なポイントになるのである。今回ナッパレザーを投入したテイラード・ブラウンという特別仕様車を追加したのは、その高級感や上質感の強化である。
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