組織文化の「10原則」とは?:企業はどうあるべきか(4/11 ページ)
日本企業にとって、企業買収、新規事業立ち上げ、大きく変化する市場などに対応する場合、単なるビジネス戦略上の打ち手だけでなく、「組織文化」についても検討の必要性が高まっている。そのような場合に、どのようなアプローチを検討するべきだろうか?
2. 行動を変える、そうすれば、おのずと考え方も変わる
昼が来れば必ず夜が来るように、精神的な切り替えさえできれば行動は変化するというのが共通認識である。だからこそ、組織はよく価値観を伝え、豪華なパンフレットにその価値観を記載することによって、考え方(そして最終的には行動)を変えようとする。
この手法は、粉飾決算や会計スキャンダルが日常化していたエンロンには通用しなかった。エンロンが掲げていた卓越、尊重、誠実、コミュニケーションといった価値観が、ヒューストンにある世界の本社屋の吹き抜けの大理石の床に刻まれていたにもかかわらずである。
実際のところ、文化においては、何を言うかよりも、何をするかの方がはるかに大きな意味を持つ。ただ単にトップダウンでメッセージを伝え、研修や開発プログラムを実施し、分かりやすいきっかけを与えることで文化を変えようとしても、人々の信念や行動を変えることはまずできない。実際、神経科学の研究から、人は考えてから行動するというより、行動してから信じるようになるということが示されている。そういうわけで、主要な行動を変えること、すなわち、具体的で実行可能かつ繰り返し実行可能であり、さらには、観察と測定が可能な変化を起こすことが、出発点にならなければならない。
多くの企業で行動の変化の好例を見てきたが、その中には、エンパワメント(意思決定に必要な承認の数を減らすこと)、協働(簡単に共同プロジェクトを招集できる方法を構築すること)、人間関係(論争を起こす問題や不満が生じた場合に備えて互いに尊敬し合うことを習慣づけること)に関係しているものがある。
ある通信企業が、顧客サービスの改善を図ろうとしていた。例えば、標語を使って不満を持つ顧客への丁寧な対応を従業員に促す、あるいは、共感を養う研修を従業員に受講させるといった、考え方に影響を及ぼそうとするやり方ではなく、この会社では、心理学者が「前兆行動」と呼ぶもの、すなわち、問題行動の発生前に必ず起こる、一見害がないように思われる行動に注目した。リーダーは、チーム編成と連携が不十分なために、顧客サービスが行き届いていないことに気付いていたのである。そこで、会社は、コールセンター内のチーム編成と連携をより効果的なものに改善する計画を実施した。同僚からより大きな支援を受けて、従業員自身も満足できるチームの一員であると感じることで、彼らの顧客対応も改善し始めたのである。
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