「狂犬」国防長官は日本にとってマイナスか:世界を読み解くニュース・サロン(4/4 ページ)
トランプ次期大統領が、米軍関係者から「狂犬」と呼ばれる人物を次期国防長官に指名すると発表した。ジェームズ・マティスである。彼は一体どのような人物なのか。日本にとってプラスなのかマイナスなのか。
芯のある人物だとの評も
日本に話を戻すと、トランプは日本が駐日米軍の駐留費をもっと払うべきだと発言している。実はこの考え方はバラク・オバマ大統領の考え方に通じるものがある。というのも、オバマは米国の同盟国が自らの軍事的リソースを使うことなく、「タダ乗り」で、米国に安全保障的な助けを求めることに苛立ちを感じてきたと心情を吐露し、その発言が2016年4月に掲載された独占インタビューで明らかになった。つまりトランプもオバマも、同盟国による軍事的な「タダ乗り」は許せないらしい。
だがマティスの立場は違う。彼は「現職の大統領が、同盟国が米国に『タダ乗り』していると見るのはバカげている」と発言している。米国の同盟関係をそんな風に見ている国防長官の誕生は、日本のみならず、すべての同盟国にとっては頼もしいはずだ。
そんなマティス、実はトランプよりも芯のある人物だと評されている。トランプは自らの暴言に後悔することもあり、撤回もしたいと発言しているが、マティスは違う。彼はこう述べている。「人生はいろいろあったし、いろんな発言もしてきた。だが一度も撤回したこともなければ、謝罪したこともない。これからも、することはない」
とにかく、少なくとも太平洋地域に対する発言や、「タダ乗り」についての発言など、日本にも関係のあるマティスのこれまでの言葉が、トランプの思いつきに引っ張られてひっくり返らないことを祈るばかりである。
筆者プロフィール:
山田敏弘
ノンフィクション作家・ジャーナリスト。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト研究員を経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。
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