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こんなモノまで? フリーズドライの開発裏アマノフーズの生き字引に聞く(1/3 ページ)

アサヒグループ食品が展開する「アマノフーズ」ブランドの看板商品がフリーズドライ食品。湯を入れるだけで完成する手軽さで、幅広い層の心をつかんでいる。定番のみそ汁のほか、スープやパスタ、揚げ物まで商品化できた秘密はなんだろうか。35年間、最前線で開発に携わってきた担当者に聞いた。

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 最高だと思った瞬間に終わり――。「アマノフーズ」ブランドでフリーズドライ食品を展開するアサヒグループ食品。アマノ通販事業部ABC+開発室長の島村雅人さんは、数々のフリーズドライ商品の生みの親であり、その進化を先導してきた。湯を入れるだけで料理を復元するという難題を乗り越えてきた背景には、新しい発見を求めて何でもやってみる行動力と失敗を糧にする反骨精神がある。

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開発に苦労したナス入りのみそ汁

 アサヒグループ食品は、アサヒグループの食品事業を担ってきた天野実業など3社のマーケティングや営業、研究開発などの部門を統合して、2016年1月に事業を開始した。アマノフーズブランドの商品開発や販売を手掛けている。現在販売するフリーズドライ食品は、店頭用・通販用を合わせて約200種類に上る。

 フリーズドライをはじめとするアマノフーズブランドの売り上げは好調だ。15年の売上高は226億円。アサヒグループ入りした08年の141億円から毎年過去最高を更新し、右肩上がりで成長を続けている。

 成長をけん引しているのが、看板商品のフリーズドライのみそ汁だ。みそ汁の売り上げは14年に約84億円、15年に約94億円となり、16年は109億円を見込んでいる。

失敗から引き出しをつくる

 島村さんは、そんなアマノの商品開発に長年携わってきた。1981年にインスタントラーメン用具材などを手掛けていた天野実業に入社し、すぐにフリーズドライのみそ汁の開発に参加。初の商品化を実現した。それ以来35年間、フリーズドライ一筋。「フリーズドライの伝道師」という異名も持つ。

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アマノ通販事業部ABC+開発室長の島村雅人さん。フリーズドライの伝道師と呼ばれる

 みそ汁に始まり、スープ、雑炊、親子丼、パスタ、とんかつ、一人鍋など、「こんなものまで?」と驚くほどのバリエーションをそろえるアマノのフリーズドライ。料理を真空で凍結乾燥させて製造するため、通常の調理とは異なり、湯で戻したときにおいしさを再現できる加工が必要となる。新商品の開発には、材料や工程を少しずつ変えながら何度も試作するという気の遠くなるような作業が伴う。

 島村さんの試作回数の多さは社内でも随一。既存のレシピではなく、自分の舌を基準にして、味や見た目、とろみなどを1つ1つ確かめる。商品化までには数え切れないほどの失敗があるが、「失敗は無駄ではない。何でもやってみることが自分の引き出しをつくるチャンス」と言い切る。

 顧客や会社からの難しい要求も多いが、「期待してもらえるから」と受け止める。開発に打ち込む姿勢は「どうしてそこまでするのか」と言われるほど。夢で「お告げ」が来るまで、諦めずに考え抜くこともあるという。

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アマノのフリーズドライ商品の一部
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