こんなモノまで? フリーズドライの開発裏:アマノフーズの生き字引に聞く(3/3 ページ)
アサヒグループ食品が展開する「アマノフーズ」ブランドの看板商品がフリーズドライ食品。湯を入れるだけで完成する手軽さで、幅広い層の心をつかんでいる。定番のみそ汁のほか、スープやパスタ、揚げ物まで商品化できた秘密はなんだろうか。35年間、最前線で開発に携わってきた担当者に聞いた。
部下は「パートナー」
開発者としての自らを「アウトロー」と自認する。上司からの厳しい要求にも、おかしいと思えば意見した。そして、「やってやろうじゃないか」という反骨精神で難題を解決してきた。「枠に入れられたら開発はできない」と、組織でうまく立ち回ることよりも、ひたすら良い商品をつくることを大切にしてきた。
現在、後輩を育てる立場となった島村さんは、自身の経験から、上下関係ではなく「パートナー」として部下と接しているという。言葉で指示するのではなく、まずは自ら手を動かす。一緒になって試作することで、開発に手間をかける姿を見せる。そして、試作品に対する意見を聞く。
ときには、激しい言い合いになることもあるという。「いい意味のけんか」をして、活発に意見交換することで、みんなが納得できる商品に仕上げることを重視している。
「理不尽な上司ではなく、対等な立場でありたい」とも。商品にも部下にもしっかりと向き合う姿勢を続けているうちに、部下の表情が明るいときは「いいものができる」と直感的に分かるようになったそうだ。
現在では部下に任せる開発も多いが、「自分でやってみないと教えられない。一緒に工夫する」という姿勢は変わらない。そんな島村さんを慕って、たくさんの開発担当者が相談に訪れている。
島村さんが目指すのは、驚きと感動を与えて、楽しんでもらえるフリーズドライ。忙しい商品開発の合間をぬって、フリーズドライを広める活動にも取り組む。15年7月から、Webサイト「アマノ食堂」で、消費者の思い出の味をフリーズドライにして届けるコンテンツを担当。全国各地を飛び回るのは大変だが、「新しい原料や人との出会いによって、さらに引き出しをつくる機会になる」と、楽しみながら取り組んでいる。
「不満を満足に、不便を便利に。あらゆる『不』をなくしたい」と語る島村さん。常に新しい挑戦を続けることがフリーズドライの絶え間ない進化を支えている。
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