シンガポールに学ぶ、カジノ実現の進め方:世界を読み解くニュース・サロン(4/5 ページ)
カジノを含む統合型リゾート(IR)を推進する法案が可決された。安倍首相はIRを成長戦略の一環だと位置付けているが、実現するにはまだまだハードルがたくさんある。一足先にカジノ解禁に踏み切ったシンガポールはどのような議論を経て、実現することができたのか。
依存症対策にも力を入れている
シンガポール政府は依存症対策にも力を入れている。政府はカジノへの出禁国民を3つのカテゴリーに分けて管理。まず1つ目は、自らの意思でカジノへ出入りできないよう登録できる自己申告だ。勤務先の企業の方針で登録しなければならない場合もあるという。
2つ目は、家族による出入り禁止リストへの登録。家族の誰かがギャンブル依存症で、家庭に影響を及ぼしている人などが対象だ。3つ目は、債務未返済の破産者や、政府からの生活補助をもらっている人、家賃を過去6カ月滞納している人、法的援助を受けている人が対象で、カジノで遊ぶのが法的に禁止され、出禁登録対象になる。
日本では生活保護受給者がパチンコに通っているという報道を目にすることもあるが、シンガポールではそんなことは絶対に許されないのである。
このカジノ出禁措置を管理しているのは政府系「ギャンブル問題国家会議」という組織で、2005年8月に、カジノが解禁になる半年ほど前から設置されてきちんと準備がなされていた。シンガポールではこうした「禁止」措置をオンラインでできるギャンブルなどにも広げている。
実はシンガポールでカジノの出禁者数は増加傾向にある。2016年11月には、1年前よりも登録者数が18%も増えていると報じられたばかりだ。ただ国民の間でギャンブルへの対策は関心が高く、専門家らからはギャンブル依存症は「脳の病気」であると喧伝(けんでん)されている。一概にカジノができたことで依存症の数が増えたとは言えないが、少なくとも出禁リストなど対策はきちんと行われているということだろう。
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