プーチン大統領を抱き込むのに「柔道外交」はどうか:赤坂8丁目発 スポーツ246(3/4 ページ)
ロシアのプーチン大統領が来日した。安倍首相と「領土問題」などを議論したわけだが、友好な関係を築くにはどうすればいいのか。プーチン大統領が13歳のころから熱中していた「柔道」を生かしてみては……。
プーチン大統領と“柔道外交”ができれば
番組の中で、プーチン大統領は少年時代からのめり込んだ柔道について「私が子どものころからこの素晴らしい競技をやり始めた運命を嬉しく思っています」と発言した。また「柔道は私のいわゆる“初恋”です」とまで言い切っていた。これまでもプーチン大統領が「柔道は単なるスポーツではなく、哲学なのだ」などと柔道に対する礼賛を繰り返していたことを考えれば、それほど驚くべき発言ではないのかもしれない。
ただ、これらの映像は日本の柔道関係者にいい意味で大きな衝撃を与えた。特に山下氏が理事・副会長・強化委員長を兼任している全日本柔道連盟や、同じく同氏が理事を務める日本オリンピック委員会(JOC)の関係者からは一様に「何らかの形で山下さんが前面に出てプーチン大統領と“柔道外交”ができれば、日本とロシアの関係はさらに前進するのではないか」との声が上がり始めているのだ。
全柔連関係者はこのように指摘した。
「北方領土での『特別な制度の下での共同経済活動』について安倍首相はプーチン大統領との会談の中で協議したと表明していたが、その共同経済活動の枠組みの中に今後段階を踏みながらスポーツ文化交流を入れていくことも『あり』だと思う。さらに北方領土だけでなくロシア全土における柔道交流を図れば、ロシアにとってもメリットは大きい。向こうも何らかの“見返り”を用意する期待も膨らむ。北方領土問題も含めた日露の懸案事項解決に向けて『柔道』が一役買えるはず」と。
しかしロシアは世界的に見ても、柔道の強国だ。そこにやすやすと日本柔道界が協力するということになれば、やはり「おかしい」という意見も当然出でくるだろう。だが、その点については前出の関係者が、こう“反論”する。
「世界に柔道人口を増やすという意味では柔道の理念に沿っている。国の壁うんぬんという話ではないし、ロシアの過疎地に日本の柔道指導者を派遣するなどそういうプランが進んでもいいと思う。無論、そこから日本側にとっても逆にロシアの指導者や選手たちと本格的に技術交流を図れるような道筋が立っていけば将来的なレベルアップにつながるはずだ」
ちなみにプーチン大統領はロシアの国技となっている「サンボ」の達人でもあり、レニングラード大学時代(現・サンクトペテルブルク大学)にはサンボの全ロシア大学選手権で優勝を達成している。同大統領は柔道だけでなくサンボマスターで「サンボ」の競技人口を増やすことにも心血を注いでいるのだ。そんな大統領お墨付きの格闘技「サンボ」は柔道にも流用できる技が多いことから、日本とロシアの柔道交流が今後活発化すれば「日本の柔道家たちが現地のサンボマスターから指導を受け、技術向上につながる道も開けてくる」との見方もある。
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