2017年は「MR元年」なのか 2社に注目:世界を読み解くニュース・サロン(3/4 ページ)
昨年は「VR元年」と言われたが、2017年はどんなテクノロジーがやってくるのか。各方面から注目されているのは「複合現実(ミックスド・リアリティ=Mixed Reality=MR)」。話題になる可能性があるこのMRとはどんなテクノロジーなのか。
マジック・リープ社が注目されている
実はいま、MRを製作している会社としてマイクロソフト以上に注目されている企業がある。米フロリダ州にあるマジック・リープ社だ。
同社は米大手企業からかなりの注目を集めている。グーグルを始め、スタートアップ投資で有名なアンドリーセン・ホロウィッツ社やクライナー・パーキンス社、投資銀行のJPモルガンや大手映画制作会社などもすでに投資に乗り出しており、中国のネット通販大手アリババも投資を行なっている。これまでにすでに14億ドル(約1640億円)の投資を呼び込んでおり、例えば2016年を見ると1カ月で8億ドル(約937億円)近くの投資を受けた月もある。
実は、マジック・リープ社が作っているMR製品はベールに包まれている。漏れ伝わっていることをまとめると、デバイスは、メガネのような半透明のレンズだ。そのデバイスを装着すると、目の前にある日常の景色に、まるでそこに実際に存在しているかのような3Dイメージ(ホログラム)が出現する。つまり、普段見ている日常生活の中に仮想の要素が追加されるのである。しかもその仮想の3Dイメージは現実のものと見分けがつかないほどのクオリティーであると報じられている。
デバイスを装着しても、眼鏡をかけるような自然な感覚であり、PCの画面のようにレンズそのものを見る感覚はないという。デバイスは常に周辺状況のデータを収集して把握し、障害物を探し、音を拾い、ユーザーの目の動きを追うという。
マジック・リープ社のCEOであるロニー・アボビッツは「私たちは本当にほかとは異なるものを作っている」と自信満々に答えている。そして、私たちの見ている現実世界がPCそのものになるのだ、とも発言している。専門家らによれば、10年後には今のスマホと同じように普通に使われるテクノロジーになっているとの声もある。
米ワイアード誌などは、MRを製作している企業はいくつかあるが、マジック・リープ社のテクノロジーは他より抜きん出ていると書いている。また米フォーブス誌は「このテクノロジーはスクリーンまたはコンピュータが絡むすべてのビジネスに影響を与える可能性がある。1200億ドル(約14兆円)規模のフラットディスプレー市場を破壊し、1兆ドル(約117兆1371億円)規模の世界的な家庭用電子機器ビジネスを根幹から揺さぶる可能性がある」と見る。
かなり注目度が高まっているマジック・リープ社だが、実は物議を醸している企業でもある。というのも、既に述べた通り、同社が開発している商品の詳細が、いまだに漏れ伝わっている以上に明らかにされていないからだ。またいくつかあるデモ映像には実際のMR製品からのものではなく、CGを使って作られた映像が多いため、メディアでも誤解が起き、批判もされている。ちなみにYouTubeで同社が提供している正式なデモ映像を見ることができるが、これは正真正銘、実際に同社のMRデバイスを通して見た世界の映像だという(参照リンク)。
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