「君の名は。」中国で大成功の裏側:立役者に聞く(1/2 ページ)
新海誠監督によるアニメーション映画「君の名は。」の中国展開が大成功している。12月2日に公開し、開始16日間の興収が5.34億元(約90億円)と歴代新記録を樹立した。なぜ中国で「君の名は。」がヒットしたのか? その舞台裏には何があったのか? “立役者”のアクセスブライト柏口之宏代表取締役に聞いた。
新海誠監督によるアニメーション映画「君の名は。」の勢いが、2017年になっても止まらない。記録的なヒットとなった日本のみならず、中国での展開も大成功している。
16年12月2日に公開し、開始16日間の興収が5.34億元(約90億円)。これまで1位だった「STAND BY ME ドラえもん」(日本公開14年/中国公開15年)の5.3億元を上回り、海外アニメーション興収の歴代新記録を樹立した。
その“立役者”となったのが、窓口として東宝から中国の配給権を取得したアクセスブライトだ。
アクセスブライトは、中国エンターテインメント市場に向け、日本のコンテンツをローカライズして発信することや、現地で日本のIP(知的財産)を利用した作品を制作することに強みを持っている会社だ。11年に創業、13年に中国法人も設立した。代表取締役の柏口之宏氏は、セガの中国法人セガ・チャイナのCEOを務めた経歴を持ち、14年以上中国のエンタメ業界に身を置いている。
15年には中国配給会社大手の光線伝媒(エンライト・メディア)からの第三者割当増資を受け業務提携し、映画事業にも参入。「ブラックジャック」の中国実写映画化および実写ドラマ化の準備も進めている。
なぜ中国で「君の名は。」がヒットしたのか? その舞台裏には何があったのか? 柏口氏に聞いた。
「君の名は。」スピード公開の舞台裏
今、中国のアニメ産業は急成長している。以前は日本や米国のアニメコンテンツが強く、アニメの興行収入記録の上位には「ドラえもん」や「カンフー・パンダ2」などの作品名が並んでいた。しかし、15年に国産3Dアニメ「西遊記之大聖帰来」(英題 Monkey King: Hero is Back)が9.6億元(約192億円)の大ヒット。中国アニメ産業に金字塔を打ち立てた。日本でも春に公開予定で、次期作の展開もスタートしている。
「16年8月に、『西遊記』に関する東宝国際部の会合の場を北京でアテンドしました。実は『君の名は。』の話は、その話し合いの中でいわばお互いの自己紹介として出てきたんです」
「東宝さんは最近は何を?」「今、『君の名は。』を準備しています。力を入れていますよ」「そうなんですか、中国でも新海監督は根強い人気がありますよ」――そんな会話が、本作の中国公開のきっかけになった。アニメ部門の担当者が新海監督ファンで、大いに盛り上がったのだ。
すぐさまボトムアップで上層部に掛け合い、本格的な商談がスタート。東宝の商談用の映像をエンライトの社内試写室で映したところ――「これはすごい! 何がなんでもやらせていただこう」。
公開準備は急ピッチで進んだ。本来、中国の映画興行は「海外輸入作品」の枠があり、年間スケジュールで公開日が決まっていて、公開までには半年から1年ほどかかるのが普通だ。そこを、約3カ月で公開するというかなりイレギュラーな形で準備を進め、初日には7000館で上映された。
「12月2日公開は契約から公開までの期間としては恐らく史上最速記録。日本公開後、旬なうちに映画館にかけることができた意義は大きかったですね。書類申請などのノウハウがなければ、このスピードは実現できなかったと思います」
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