残業削減、育児両立――中小企業が取り組む働き方改革:東京ライフ・ワーク・バランス認定企業
2016年度「東京ライフ・ワーク・バランス認定企業」が発表。企業の経営課題であり、強みにもなる「働き方改革」だが、中小企業にとってモデルケースとなる取り組みにはどのようなものがあるだろうか?
近頃、「働き方改革」「ワークスタイル変革」という言葉を聞かない日はない。さまざまな企業にとって働き方を変える取り組みは経営課題となり、また取り組みを進めている企業にとっては強みとなったり、新たなビジネスのきっかけとなったりしている。
しかし、まだまだ「働き方を変えられるのは体力のある大手企業だ」と考えている人もいる。実際に中小企業にとってモデルケースとなる取り組みにはどのようなものがあるだろうか。
東京都は2008年から、従業員が生活と仕事を両立しいきいきと働き続けられるための取り組みを実施している中小企業を「東京ワークライフバランス認定企業」として選定し都民に公表している。16年からは「よりライフ(人生・生活)を重視する」というメッセージを発信するべく、「東京ライフ・ワーク・バランス認定企業」と名称を改めた。16年度の認定企業の発表と授与式が2月8日に行われ、小池百合子東京都知事が登壇した。
「東京都が力を入れているのは、誰もがいきいきと活躍できる社会『ダイバーシティ』の実現です。そのための鍵になるのが働き方の改革。今回は、都内中小企業33社39件の取り組みの中から、他の企業のモデルとなる6部門13社を認定企業に選出しました」(小池都知事)
評価のポイントは4つ。「経営層を含め、社内全体で推進している取り組みであること」「社内の課題が明確化されており、かつその解決に有効な取り組みであること」「従業員の意見を反映できる仕組みがあること」「取り組みが社内に周知されており、利用実績があること」。認定企業13社は以下。
長時間労働問題削減取組部門
- アドバンテッジリスクマネジメント(メンタリティマネジメント事業など)
【取り組み内容】労働時間の適宜報告による意識付けの実施、週2回のノー残業デーの実施、定時退社の推進、仕事の効率化の推進
- ランクアップ(化粧品の開発および販売)
【取り組み内容】社員の残業チェックを実施、仕事が終われば就業時間の30分前に帰れる制度(17時に帰っていいよ制度)、時短勤務制度、選べる時間休制度、業務スピードを上げる6つの社内ルール
休暇取得促進部門
- アオアクア(訪問看護・リハビリ事業など)
【取り組み内容】年間休日130日(年次有給休暇を除く)以上あり、年次有給休暇取得率100%、全休暇が半日単位で消化可能
仕事と育児の両立推進部門
- 赤ちゃんとママ社(育児雑誌の刊行など)
【取り組み内容】両立しやすい多様な働き方支援、パパ休暇制度の導入、両立しやすい職場づくり、部署間を横断したプロジェクト
仕事と介護の両立推進部門
- 白川プロ(映像編集、音響効果)
【取り組み内容】アンケートによる社員の介護状況の把握、パンフレットを制作し社員に配布、社内向けセミナーや個別相談会の開催、休暇制度および労働時間の見直し
多様な勤務形態導入部門
- アルス(コンピュータ・ソフトウェアの設計・開発)
【取り組み内容】モバイル勤務・在宅勤務による勤務場所の多様化、短時間勤務・フレックスタイムによる柔軟な勤務時間制度の導入、ライフイベントに合わせた雇用形態・勤務形態の変更
- エス・エー・エス(ソフトウェアの開発、クラウドサービスの提供)
【取り組み内容】テレワーク制度の整備・導入、テレワーク勤務制度を利用しやすい環境づくり、ワークライフバランスに関する教育・研修の実施
- Chatwork(ビジネスチャットツールの企画・開発・販売)
【取り組み内容】個々のライフスタイルに応じたリモートワークの実施、自らキャリアを決めることができる仕組み、副業の承認
職場における女性の活躍推進部門
- 内野製作所(精密歯車の製造)
【取り組み内容】環境整備・風土改革、開かれた採用活動、活躍の場の拡大、多様な育成メニュー
- ケア・プランニング(介護・福祉事業)
【取り組み内容】職場風土改善、出産や育児中の女性が働きやすい就業形態の多様化、女性の管理職登用促進、プロジェクト参加など活躍の場を拡大
- セントワークス(介護業界向けシステムの開発・販売など)
【取り組み内容】ワークライフバランスセミナーの開催、「朝・夜メール」による時間管理・情報共有の実施、チーム及び個人での「WLB目標」の設定、「カエル会議」を通じた業務の見直し実施、在宅勤務制度の導入、月1回の定例会の実施、「ちびおやランチ会」の実施、「イクボスセミナー」の実施
- 多賀建設(土木工事業)
【取り組み内容】女性の積極的な雇用・活躍の促進、業務に関する資格の取得・講習会参加の積極化、育休・育児休業の積極的な取得支援
- トーリツ(訪問介護・看護など)
【取り組み内容】女性の定着支援、誰もがいきいきと働ける仕組みづくり
16年は、「長時間労働」問題が顕在化した。17年の「働き方改革」のポイントとなるキーワードはなんだろうか。「17年度の目玉は、国と提携したテレワークの推進。テレワーク推進センターを作り、企業のテレワーク活用を強力に後押ししていきます」(小池都知事)
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