コンサル業界は働き方改革をできるのか:人気業界の一角(1/2 ページ)
コンサルティング業界は今や人気業界の一つらしいが、その長時間労働の実態はあまり知られていないようだ。世の中で「働き方改革」が注目されている中、この業界でも真剣な取り組みが不可欠な時期に来ている。
日沖博道氏のプロフィール:
パスファインダーズ社長。25年にわたる戦略・業務・ITコンサルティングの経験と実績を基に「空回りしない」業務改革/IT改革を支援。アビームコンサルティング、日本ユニシス、アーサー・D・リトル、松下電送出身。一橋大学経済学部卒。日本工業大学 専門職大学院(MOTコース)客員教授(2008年〜)。今季講座:「ビジネスモデル開発とリエンジニアリング」。
安倍政権が構造改革の柱として採り上げている「働き方改革」は産業界のホットテーマだ。とりわけ「長時間労働の是正」というのが喫緊の課題であり、学生らの就職先の選択においても大きな要素となっているだろう。
そんな中、小生が注目しているのがコンサルティング業界である(わが社もその一員だが)。われわれが就職した数十年前と違って今や人気業界の一角とまで言われることがあるそうだが、この四半世紀の実態はかなりの「長時間労働」業界だった。3Kで有名なSI業界からの転身組が多いせいか、実態も似てきたのである(むしろ最近はSI業界のほうが働き方改革を進めている傾向がある)。
そんな「長時間労働」業界でも就職または転職における人気が高まったのは、ひとえに給与水準が高く、任せてもらえる仕事の内容(クライアント企業の経営事項に関わるなど)が面白いことに尽きよう。しかしそうした就職・転職人気にあぐらを掻いて長時間労働の是正に背を向けていては、いずれは大きなしっぺ返しを食らいかねない。新入社員の自殺問題で電通がクローズアップされたのにもそうした側面があろう。
ちなみに小生が昔いた頃のアーサー・D・リトルという戦略コンサル会社は例外的存在だったため、当時もその後も、他の外資戦略系コンサル会社にいる人達と互いの実態話をすると結構あきれられることが多かった。「ウチではその倍は働いている」とか「タクシー&御前様でない日を数えたほうが早いよ」とかいうコメントが多かったので、他社はその頃から長時間労働だったと思われる。
それでも、戦略系よりずっとずうたいの大きい「会計系」とか「総合」が付く大手コンサル会社の人たちに話を聞くと、さらに輪を掛けた「長時間労働」の実態にこちらがあぜんとすることが多かった。
実際、それで体を壊したり精神を病んでしまったりする人が毎年数%いるという話を幾人からも平気で聞かされたものである。その場にいた某社での先輩・後輩の関係の人たちが「あの頃はアパートには寝に帰っているだけでしたよ」などと懐かしそうに振り返るのには、「こいつらマゾか」と思ったものだ。
体や精神を病む人が一定数存在することに関し小生が「それはおかしくないの?」と問いかけると、某有名コンサル会社の若手幹部役員は平然と「ある程度の病人を抱えるのは仕方ないですね。僕らパートナークラスが仕事を取ってきて、若手に馬車馬のように働いてもらう。これがこの業界のビジネスモデルですよ。今さら何ですか」と答えてくれたものだ。
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