ケアマネジャーを介護事業所から分離させよ(1/3 ページ)
利用者の立場で中立公正であるべきケアマネジャーが介護事業所に雇われている。この構図が必然的に不適切なケアプランと不公正なサービス給付を生み、地方財政を脅かす。ならば分離するしかない
日沖博道氏のプロフィール:
パスファインダーズ社長。25年にわたる戦略・業務・ITコンサルティングの経験と実績を基に「空回りしない」業務改革/IT改革を支援。アビームコンサルティング、日本ユニシス、アーサー・D・リトル、松下電送出身。一橋大学経済学部卒。日本工業大学 専門職大学院(MOTコース)客員教授(2008年〜)。今季講座:「ビジネスモデル開発とリエンジニアリング」。
「利用者のためというより会社のために働いているようでやりきれない」「経営者に言われるままに限度いっぱいのサービスを使わせている(ことに罪悪感を覚える)」「自社のサービスを利用させた実績がボーナス評価に反映される」。自分の家族や親しい友人に対しこうした心情や実情を吐露するケアマネジャーの人たちは少なくないという。
同様に、介護用品レンタル会社や訪問看護師など、関連サービスを提供する立場の人たちから見ても不適切なケアプラン(支援計画)が横行していることも指摘されている。自社のサービスを優先させるのは当たり前、会社の都合で不要なサービスを押し付けることもいとわない、と。
ケアマネジャー(正式には介護支援専門員)の仕事とは、介護認定を受けた要介護者やその家族からの相談に応じ自宅や施設で適切なサービスが受けられるようにケアプランを作成し、要介護者の健康状態やサービス状況をモニタリングしたり、関係機関との連絡や調整を行ったりするものだ。とりわけケアプランの作成はケアマネジャーにしか許されておらず、これが最重要の仕事といってよいだろう。
その重要な役割を任されているケアマネジャーがなぜ、冒頭のような罪悪感を覚え関係者からの批判を受けるような行動に走るのだろうか。
端的に言って、彼らの大半は介護サービス事業所に所属する「雇われ人」であり、経営者から強く要請されたら言うことを聞かざるを得ないからだ。そしてその介護サービス事業には、「高齢化時代ゆえ確実に成長する産業だ」ということでもうけ主義の連中も続々と参入してきた経緯がある。
考えてもみて欲しい。仮に、被災者が家電製品を買い替える場合に購入金額の90%まで国の補助金が出るような制度があり、その際に何を買うのかを助言し補助金申請を行う人が間に立つことが法律で決められているとしよう。もしその助言担当者が家電販売店に所属する人間だったら、限度額いっぱいまで高級品を買わせるよう、家電販売店の経営者は助言担当者の尻をたたくに違いない。今の介護制度というのはそういうゆがんだ仕組みなのだ。
実は、自社のサービスを目いっぱい利用させるケアマネジャーは、利用者家族からの評価が悪いどころか、むしろ「要介護認定度を高めにしてもらい、さまざまなサービスを利用できるようにしてくれてありがたい」と高く評価される傾向すらある。というのも、介護保険で費用の9割が賄われるので、本人・家族の懐は大して痛まないからだ。
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