華のない京王電鉄の強みは、どこにあるのか:個性は「足」(1/3 ページ)
京王電鉄は、小田急電鉄のように「ロマンスカー」といった「象徴」のない路線だ。しかし、沿線には多くの人が暮らし、人気の高い路線となっている。一見、華のないように見える京王電鉄。そんな京王の強みは、どこにあるのか。そしてその強みから何を学べるのか、考えてみたい。
京王電鉄は、特別料金を支払う必要のない列車ばかりである。近いうちに、有料での着席サービスが行われるという計画もあるが、東武東上線で見られるようなロングシート・クロスシート転換可能な座席や、小田急電鉄のロマンスカーのような質感の高いリクライニングシートなどがない。
京王八王子や京王多摩センター、橋本までの長距離旅客のために、ちょっとしたサービスを提供する程度のものになるであろう。もっとも、新宿から京王八王子は37.9キロ、橋本は38.1キロである。
現在は、ロングシートのみの通勤電車を使用した路線であり、それほどの個性があるように思えない。だが、京王はポテンシャルの高い路線なのだ。
富裕層の住む路線
京王電鉄の子会社、京王エージェンシーによる交通広告の案内『京王メディアガイド2016』によると、「活性化する街を結ぶ。感度の高い人を運ぶ。」とある。おそらくは新宿や渋谷といったターミナルだけではなく、井の頭線沿線の下北沢や吉祥寺、京王線沿線の明大前や仙川、調布、府中といった街のことを指し、そこで暮らしている人を「感度の高い人」と評価している。
そしてこのメディアガイドでは、「沿線エリアの特徴」として「高年収層や富裕層が多く、居住地域に満足しており、第三者にも住みやすい街として京王沿線を勧める住民が、数多く存在する人気の高いエリアです」と特徴をうたっている。
実際、それを裏付けるようなデータもある。ターミナルとなっている新宿や渋谷周辺では富裕層の読者が多い『日本経済新聞』がもっとも読まれており、住宅地の杉並区や世田谷区では大卒サラリーマン家庭の読者が多い『朝日新聞』が読まれている。特に井の頭線沿線は『朝日新聞』の読者が多く、この地域には大卒層の住民も多い。
京王線の調布市エリアより先になると『読売新聞』読者が多く、庶民的なエリアになっていく。
鉄道は平凡な印象を受けるが、利用者は他社に比べて、特徴があるのだ。しかし、それでいてそのスゴさを、強くはアピールしない。それが、京王線なのだ。
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