金正男だけでない!? 殺人工作のリアル:世界を読み解くニュース・サロン(1/4 ページ)
金正日総書記の長男である金正男が、女性2人に襲われて暗殺される事件があった。この事件は大きく報じられているが、実は世界を見渡せば、国家が絡んでいるとされる秘密工作は少なくない。例えば……。
世界を読み解くニュース・サロン:
今知るべき国際情勢ニュースをピックアップし、少し斜めから分かりやすく解説。国際情勢などというと堅苦しく遠い世界の出来事という印象があるが、ますますグローバル化する世界では、外交から政治、スポーツやエンタメまでが複雑に絡み合い、日本をも巻き込んだ世界秩序を形成している。
欧州ではかつて知的な社交場を“サロン”と呼んだが、これを読めば国際ニュースを読み解くためのさまざまな側面が見えて来るサロン的なコラムを目指す。
2017年2月13日、マレーシアのクアラルンプール国際空港で、北朝鮮建国の父・金日成の孫で、金正日総書記の長男である金正男が、女性2人に襲われて暗殺される事件が起きた。
もともと北朝鮮とマレーシアは経済を中心に比較的良好な関係を築いてきたが、今回のニュースは外交などが複雑に絡み、国際摩擦を巻き起こすような類の事件になっている。マレーシアの情報機関SBのトップも「かなり複雑だ」と言っている通り、例えば容疑者のパスポートひとつとってもすべて遡(さかのぼ)って精査し直しているはずだ。とにかく真相解明にはまだまだ時間がかかりそうだ。
この暗殺事件は驚きをもって受け取られているが、実は世界を見渡せば、この手の国家が絡んでいるとされる暗殺などの極秘工作は少なくない。「今の時代に?」と思われるかもしれないが、実際に北朝鮮にも負けずとも劣らない暗殺工作を繰り広げていると言われる国がある。イスラエルだ。
言うまでもなく、イスラエルはアラブ諸国の中にあるユダヤ人の国家だ。周囲はほとんど敵国であり、現実に過去4度にわたってアラブ諸国を相手に中東戦争を戦い、中小規模の戦闘も数多く発生している。
地政学的にも不安要素を抱えるイスラエルには、自国の存続に障害となるものに対して、極秘工作で対処してきた歴史がある。そうした任務を担うのは、映画や小説などにもよく登場し、日本でも知られている諜報機関のモサドだ。
最近でも2010年から、モサドの手によると見られる一連の大胆な暗殺工作がイランで起きている。その背景にはイラン核開発問題がある。イランでは2002年に、国内で核開発を進めていることが暴露され、国際社会から非難を浴びてきた。
この核の脅威を絶対に見過ごせなかったのが、イランの最大ライバルであるイスラエルだった。イランはイスラエルを地図上から消滅させると挑発し、イスラエルもイランの核施設への空爆も視野に入れていた。
関連記事
- 中国政府がいま最も恐れているのは、ネット上の「くまのプーさん」
中国共産党がネット上の検閲に力を入れている。いわゆる「サイバーポリス」と呼ばれる工作員が反政府的な発言などをチェックしているが、2015年に最も削除された発言は……。 - トランプの年収はなぜ1ドルなのか
米国の大統領に就任したドナルド・トランプは、どのくらいの報酬を手にするのか。仕事の対価として年間40万ドルの給料が支払われることになっているが、トランプは「年収1ドルだけ受け取る」と公言している。米国では「年収1ドル」の政治家は多く……。 - トランプ時代に“貧弱なパスポート”はどれか
トランプ大統領の「イスラム教徒の入国禁止措置」が話題になっている。イスラム教徒が多い7カ国の人たちの入国を一時的に禁止したわけだが、実はパスポートには強さのランクがあるのをご存じだろうか。強いパスポート、弱いパスポートを検証したところ、入国禁止措置の疑問点が見えてきた……。 - 日本人、それってオカシイよ 「過労死」を生む日本企業の“常識”
過労死の問題が話題になっている。この問題に対して、海外メディアはどのように報じているのか。「労働時間」「残業」「休暇の取得」などは常識の範囲内で行っているつもりかもしれないが、外国人からは“非常識”に映っているようだ。 - 世界から「児童ポルノ帝国」と呼ばれるニッポン
衆議院で可決した「児童買春・ポルノ禁止法」改正案。日本では大きく報じられていないように見えるが、海外では大きな話題になっている。規制が強化された格好だが、海外メディアの反応は厳しい。その内容とは……?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.