上場企業の不適切会計、16年は過去最多 大企業で多発:単純ミス、粉飾、横領……
2016年に不適切な会計を開示した上場企業は過去最多に。うち半数を東証1部上場企業が占めていた。
東京商工リサーチは3月15日、2016年に不適切な会計を開示した上場企業は57社・58件に上り、08年の調査開始以来、過去最多を更新したと発表した。うち東証1部上場の大企業が27社・28件と約半数を占め、同社は「過度なノルマ設定や業績至上主義などが原因」と指摘している。
内容別では、経理ミスや会計ミスなど「誤り」が最多で、25件(43.1%)。次いで売り上げの過大計上など「粉飾」が24件(41.1%)、資金の私的流用など「着服横領」が9件(15.5%)と続いた。
発生当事者別では、開示当事者の「会社」が前年比2倍超の27件に急増。「会計処理手続きの誤り、売り上げの前倒し計上、売上原価の先送りなどが起きていた」という。一方、「従業員」「役員」「子会社・関連会社」が不適切会計の当事者となるケースは減少していた。
業種別では、「製造業」が15社(26.3%)で最多。次いで多かったのは「運輸・情報通信業」で、10社(17.5%)だった。同社は「製造業での不適切会計は、国内外の子会社・関連会社の体制不備によるものが多い」とみている。運輸・情報通信業については「不明瞭な外部取引により費用を過大に計上していた企業があった」という。
15年5月に東芝の不適切会計が発覚して以降、金融庁と東京証券取引所が中心となり、ガバナンス強化に向けた取り組みと監査の厳格化を進めている。にもかかわらず、不適切会計数が増加していることについて、東京商工リサーチは「監査基準の強化と不適切会計はいたちごっこの関係。悪循環を断ち切るには、現場と経営側とのコミュニケーション強化が急務だ。風通しの良いコミュニケーション環境が整わない限り、不適切会計は繰り返される」と警告している。
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