NASAはなぜ中国を“脅威”に感じるのか:世界を読み解くニュース・サロン(4/4 ページ)
宇宙開発で世界の先端を走っている米国が、中国を脅威に感じている。開発予算をみると、中国の約110億ドルに対し、米国は約390億ドル。差は大きく開いているのに、なぜ米国は中国の動きを注視しているのか。
米中の宇宙競争が激化する可能性
トランプの側近たちの見方を寄稿文から見る限り、宇宙開発において中国に対して妥協したり、融和的になることはないと考えていい。中国人を排斥する法律もひっくり返ることはないだろう。
ちなみにサイバー紛争の観点から見ると、中国はNASAや関連研究所などにもサイバー攻撃で潜入に成功しており、かなりの貴重な情報が中国当局によって盗み出されてしまっていると指摘されている。つまりNASAから完全に出禁になっていても、サイバー空間で重要な情報をNASAから入手しており、もしかしたら米国の出禁措置も、サイバー戦争の時代にはあまり効果がないのかもしれない。それどころか、逆にサイバー攻撃を促す結果になってさらに貴重な情報が盗まれていることだってあり得るのだ。
ともかく、現時点でトランプの宇宙計画についてはまだ具体的な政策は発表されていない。だが、こんな話が内部から漏れ伝わっている。トランプはまず民間との協力を強化し、1961年のケネディのように、自分の任期中に米国人を月に上陸させようとしているという。そして中国に対して、米国の実力と主導権を見せつけようとしている、と。強硬派を抱えるトランプ政権により、これから米中の宇宙競争が激化する可能性は十分にある。
トランプ政権下で米中の今後の関係がどう展開するのか注目だが、少なくとも、宇宙開発においては米中が1961年の米ソを彷彿とさせるような状況にあることは間違いなさそうだ。
筆者プロフィール:
山田敏弘
ノンフィクション作家・ジャーナリスト。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト研究員を経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。
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