見出しに「モンゴルへ帰れ!」 いかがなものか:赤坂8丁目発 スポーツ246(2/3 ページ)
大相撲春場所は新横綱・稀勢の里が逆転優勝した。2場所連続優勝を成し遂げた稀勢の里に拍手を送りたいが、素直に喜べないことがあった。それは「稀勢の里が善」で、優勝を逃した「照ノ富士が悪」であったことだ。どいうことかというと……。
稀勢の里に同情の声
取組当日、NHKの大相撲中継で解説を務めていた尾車親方(元大関琴風)も照ノ富士の立会いの変化について「大関の立場にありながらいただけない」と批判していた。だが、これはあくまでも有識者の個人的な見解。正当化されるべき意見ではない。仮にこの尾車親方の指摘が正しいとすれば、千秋楽の本割で稀勢の里が照ノ富士を相手に敢行した立会いの変化も「横綱の立場でありながらいただけない」と批判されるべきである。
ところが稀勢の里の場合は批判するどころか、同情の声が向けられた。同じく千秋楽でNHKの大相撲中継の解説を務めた元横綱・北の富士氏は稀勢の里の一番を見終えた後「これしかなかったんだろうねえ」とポツリ。左上腕部の負傷というハンデがありながらも勝つためには注文相撲を取ってもやむを得ない。そう言わんばかりだった。
確かに稀勢の里の立会いの変化に対し、照ノ富士はやや体制を崩されながらも何とか対応したことでこの注文相撲が直接の決まり手にはつながらなかった。そこは照ノ富士と琴奨菊の一番との違いではあるものの、ケガを背負った役力士(横綱・大関・関脇・小結の総称)が立会いで変化した点はまったく同じだ。そういう意味では同じ注文相撲を取りながらも稀勢の里は「良し」とされ、照ノ富士だけが猛烈な批判を受けていることにとても大きな違和感を覚える。
なぜこのような形になってしまったのだろうか。このケースは大変悲しいことだが、多くの人々の心に知らず知らずのうちに実は根付いている「差別意識」から生まれてしまった現象だと思っている。大相撲の中にも一部に「モンゴル人力士」を嫌悪する向きがあり、これが先場所の優勝争いで一気に露になってしまったような気がしてならない。もし照ノ富士が日本人力士だったら対琴奨菊での注文相撲に“物言い“は付けられても、ここまで大バッシングを受けるようなことはなかったと思われる。
モンゴル出身力士の照ノ富士は日本人力士・琴奨菊の大関返り咲きを汚い相撲で阻止した「悪玉」。一方の稀勢の里は日本人力士で、左上腕部筋肉損傷の負傷がありながら強行出場した責任感の強い「善玉」。心ない行為に及んだ人たちはおそらく頭の中でこんな風に両力士をイメージしていたのではないだろうか。となると、これは何か危険な方向に行きそうな気配も感じられる。
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