「どうせ売れない」を覆した「もぎたて」大ヒットの理由:発売から1年(3/3 ページ)
2016年に706万ケースを販売したアサヒビールの缶酎ハイ「もぎたて」。これまで、売れる酎ハイをなかなか生み出すことができなかった同社が、なぜ大ヒット商品を生み出せたのか。
「どうせ売れない」という社内外の意識を変えた
宮广さんはプロジェクトリーダーとしてメンバーのモチベーション向上にも努めた。同社の場合、通常であれば商品の中身やネーミング、キャッチコピーなどを完成させてから販促のプロジェクトチームを立ち上げるのだが、宮广さんは商品のコンセプトと中身(成分)以外何も決まっていない段階から、多くのメンバーに加わってもらった。
「『うちの酎ハイは売れない』という印象が全社的に根付いていました。それではモチベーションも上がりませんし、ヒット商品を作ることはできません。商品を完成させていく過程から多くの人に関わってもらうことで、より強い当時者意識を持ってもらい、団結力を高めようと考えました」
宮广さんによれば、もぎたてがヒットする前はRTD事業に関心を持ってくれる人は少なかったという。しかし現在は、商品開発の研究部門も「どうすればもっと果汁感を高めることができるのか」と、もぎたての改良に必死になっているそうだ。
取引先の小売り店には、とにかく徹底的に飲んで比較してもらい、今までの酎ハイとの違いをアピールしたという。
「当社の酎ハイ製品が本当に売れるのか、小売り店も半信半疑。『どうせまた売れないでしょ?』と思われていました。しかし、試飲していただくと『お、今回はいけるかもね!』と好反応に変わりました」
一般消費者にも発売前に、同社史上過去最大規模となる50万本のサンプルを配布し、もぎたての果汁感、新鮮さを体感してもらった。こうした取り組みも発売から1週間で70万ケースを売り上げる成功につながっている。
宮广さんは、もぎたてについて「まだまだ進化できる」と話す。
「もぎたての果汁感、新鮮さをどこまで追求できるか、まだまだ挑戦の余地はあります。フレーバーの種類も定期的に拡充し、今年度は1100万ケースの販売を目指します!」
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