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廃線観光で地域おこし 「日本ロストライン協議会」の使命:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/4 ページ)
全国で廃線利活用事業を営む団体の連携組織「日本ロストライン協議会」が設立総会を開いた。4月9日の時点で15団体が参加している。廃止された鉄道施設を観光や町おこしに使おうという取り組みは、鉄道趣味を超えた新しい観光資源を作り出す。
懐かしむ廃線跡から、楽しむ廃線跡へ
鉄道車両を使わない「レールバイク」や「トロッコ」は、鉄道趣味とは言えない。しかし、鉄道ファンの私が神岡のガッタンゴーに乗ってみたら、とてもおもしろかった。線路に近い目線で、自力で走る経験は気分を高揚させる。分岐器を通過すると、自分が鉄道車両になったような感覚。鉄橋もトンネルもそうだ。本物の線路を使った「でんしゃごっこ」の楽しさだった。
廃止された鉄道線路が、観光資源として生き返ったように思えて感動する。そして汗をかいた。これはスポーツだ。心地良い汗をかいて、風呂に入りたくなった。ここは奥飛騨温泉だ。そうか、ガッタンゴーは、自身のレジャー施設としての収益のほかに、温泉町の付加価値でもあるわけだ。温泉に行きたい、どこに行こう。何かほかにおもしろい施設があるところが良いな、となる。地域に貢献するレジャー施設へ。新たな使命を受けて愛される鉄道がある。それがロストライン・ツーリズムだ。
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