高齢者事故を防止する人間工学:池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/4 ページ)
自動車の設計において人間工学は重視されているはずだ。しかし、もう何十年も言われ続けているにもかかわらず、改善できていない問題がある。それはペダルオフセットだ。
「次は新型のアクセラで試して下さい」と言われ、まったく同じ装備のままオフセットのない新型アクセラで試すと、身体を捻ってもブレーキペダルが安定して踏める。踏み替えの労力もずいぶんと軽減されている。「ものすごい差でしょう?」と言いたげなマツダの人たちのどや顔はともかく、正直なところ、高齢者にとって思った以上にその差は大きいと言うことが分かった。
次に機械式の発券機で駐車券を取る動作を試した。これもブレーキペダルを踏んだまま窓を開けて上体を乗り出し、駐車券を取るという動きだ。相当に意識していないとペダルから足が浮きそうになる。そして悔しいが新型ではそうならない。あるいは度合いが圧倒的に低い。ペダルオフセットは高齢者の事故を誘発する大きな問題である。
一通りの体験後、なぜこんなことが起きるのかについてレクチャーを受けた。キーになるのは太ももの捻りである。もしあなたが今椅子に座っているのであれば、右足のかかとを基点につま先を内側に捻ってみて欲しい。これはオフセットのあるブレーキペダルを踏んでいる状態だ。そのまま上体を右に捻ると、脚全体の捻りがそれ以上追随できず、身体の捻りに引っ張られてペダルから足が離れてしまう。今度は上体を左に捻ってほしい。この場合、上体を右に捻るよりはマシだが、それでもかなり意図的に足首とかかとの位置を維持しようと思わなければ、ペダルの踏力が変わってしまう。
さて、もう一度実験だ。今度は最初にブレーキペダルを踏むときに足首を捻らない。普通に座って真っ直ぐにブレーキペダルを踏める、つまりオフセットのないケースである。そのまま左右に上体を捻ると、足首の角度をほぼ維持したまま、つまり安定してペダルを踏み続けることができる。
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