信頼されたければ“情報提供上手”になれ:常見陽平のサラリーマン研究所(2/3 ページ)
私たちは「情報過多」の時代を生きている。その情報を上手く生かすことができているだろうか。入手した情報はビジネスに生かさなくては意味がない。会社を上手く利用して好きなことをするためにも、社内外から認められ、好かれるためにも「情報提供」が重要なのだ。
「情報提供」で上司を手なずけるのだ
私はサラリーマン時代、課長クラスなのにも関わらず事業部のフィクサー(組織の活動における意思決定の際、陰で影響力を発揮している人)となっていた人を何人も見た。うまい具合に事業部長クラスを手なづけ、自分のやりたいように事業を動かしていたのだ。
彼らは何をしたのか? まさに情報提供だ。自分のやりたい案件に関する情報を粘り強くアウトプットする。会議などはもちろん、普段のメールのやりとりの「追伸」や、廊下やトイレでの立ち話でも何度もアウトプットする。「最近、こんな市場が盛り上がっていますよ」「私が提案していたあの件ですが、競合のA社も始めましたよ」という具合に。
しかも、情報提供のタイミングにも気を遣う。上司の機嫌が良さそうなとき、余裕がありそうなときを見計らってアウトプットする。そうすると上司は徐々に「こいつの言うことを信じてみようか」というふうになるのだ。
別に出世しなくても、独立して起業しなくても、好きなことを仕事にすることはできる。自分の案件を通すために、上司への情報提供で会社を動かすのだ。
顧客や取引先に好かれるために
もっとも、社内で情報提供をし続けて物事を動かすのは「いやらしい」と思う人がいるかもしれない。より一般的なのは、顧客や取引先への情報提供だろう。商談、取引などを円滑に進める上でも、信頼を勝ち得る上でも情報提供は重要だ。
私が新人営業マンだった頃に目撃した光景だが、高い業績をあげている人たちは押しが強いだけでなく、“情報提供上手”だった。いつも情報の「お土産」を持って、顧客に訪問するのである。他業界などの動き、最新のビジネス事例などの記事をコピーして持ち込む。しかも、単なる雑談のようで、そのネタ提供を通じてヒアリングをしたり、商談につなげたりするのである。
天才的営業マンと言われた人は、いつも商談のときに、担当商品の話だけでなく、顧客が何に食いついたのかをメモしていた。このお客さんは何に興味を持っているのか、と。そしてお礼のメールなどを送る際に、「追伸」で情報提供をし、商談を広げるのだった。
この際のポイントは、相手にとって釈迦に説法の話にならないようにすること、上から目線にならないことだ。あくまでお役に立ちたいというスタンスが大事だ。「こいつと付き合って得なのか」と思ってもらわなくてはならない。相手は何に興味があるのか。深く考えて情報発信しよう。
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