調査会社のMM総研はこのほど、人工知能(AI)を活用したビジネスに関する日本・米国・ドイツ間の比較調査の結果を発表した。2016年度のAIビジネス市場規模は、米国が約4兆円、ドイツが約3000億円だった一方、日本は約2000億円と他国より小規模であることが分かった。
AIをビジネスに導入済みの企業の割合は、米国が13.3%でトップ。2位のドイツは4.9%で、最下位の日本は1.8%にとどまった。AIのビジネス導入を検討している企業の割合も、米国が32.9%、ドイツが22.4%、日本が17.9%と続く結果に。日本企業は導入・検討ともに他の2カ国に後れを取っていることが浮き彫りとなった。
では、どのような点が日本企業へのAI導入の阻害要因となっているのだろうか。 調査では、日本企業の課題点は(1)マネジメント層の認知度と投資意欲、(2)環境の不備、(3)AIを提供するITベンダーの強み――の3点に集約されることが分かった。
AIに投資している企業のうち、AIを活用したサービスや技術面を熟知しているマネジメント層が在籍する割合は、米国が49.8%、ドイツが30.9%、日本が7.7%。日本企業では、上層部が深く理解しないままAIに投資している状況が明らかになった。
MM総研は「上層部が知識を得た上で導入を判断し、プロジェクトを統制しなければ、AIのビジネス活用は困難」と指摘する。
環境面については、日本企業は「AIを利活用する環境が整っていない」「分析対象のデータについて、導入業者と合意が取りづらい」などの項目が他国を上回っており、IT環境の不備や、データの使用方法の曖昧さがAI導入を妨げていることが分かった。
AIの提供を手掛けるITベンダーの特徴を分析したところ、日本のベンダーは「良質な学習データ」の保有率では他国を上回ったものの、「データサイエンティストなどの優秀な人材」「業務ノウハウ」の保有率では下回る結果となった。
同社は「今後、日本企業がAI市場で戦っていくためには、データサイエンティストやプログラマーなど人材の採用と教育が課題。課題解決のノウハウとAIを組み合わせ、どのようにビジネスの課題を解いていくのかが問われる」とみている。
調査は、AIをビジネスに導入済みの企業と検討段階の企業を対象に、3月2〜16日にかけてWebアンケート形式で実施。日本で2000件、米国で500件、ドイツで500件の回答を得た。
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