2020年、中国はITで化ける 世界最大の「IoT大国」に:山谷剛史のミライチャイナ(4/4 ページ)
中国は一気にIoT大国への発展を遂げようとしている。IoTは中国の国家戦略として政府が全面的に支援し、5G通信やAIなど関連技術も巻き込み、中国を超IT大国に押し上げようとしている。現地の事情に詳しい山谷氏のリポート。
「スマートシティ」化も急ピッチ
監視カメラやさまざまなIoT機器を活用する「スマートシティ」の建設も中国各地で進んでいる。日本でも神奈川県藤沢市の一部など各地で導入が進められているが、中国は年内に500都市以上でスマートシティ化が進められるという。報道によると、既に290都市で「国家スマートシティ」が選定されていて、また300超の都市で、通信会社や支払いサービス「支付宝(アリペイ、Alipay)」を提供するアリババ系の金融会社のアント・フィナンシャルやテンセントなどの企業とスマートシティ建設の協議が行われているという。
スマートシティはここでは語りつくせないが、ここでは各種カメラによる顔認識でサービスが利用できるというシステムが、中国の複数地域で導入されつつあるという点にフォーカスしたい。
例えば中国西北部に位置する寧夏回族自治区の銀川市では、顔認識システムと銀行をリンクさせて、顔パスでバスに乗れるシステムを試験導入したという。また蘇州や長沙など複数の駅でも顔認識を導入した。また、横断歩道で信号無視して渡った人の情報をさらすシステムなども一部都市の一部地域で試験的に導入されている。
IoTと5Gなどの普及が進んでいく2020年には、実用的な顔認識の利用も普及しているかもしれない。それは実名登録の電話番号に各種サービスをひも付けている現状以上に、消費者はスピーディーでセキュアにサービスを利用できる可能性がある。あらゆる業界にネットを導入するという「インターネット+(互聯網+)」政策も相まって、あらゆる業界のサービス利用情報がクラウド上に蓄積され、ビッグデータやAIと連携していく。これまでのサービス利用情報からユーザーの好みを分析し、別のサービスで気の利いた提案をしてくる──といったことも出てくるかもしれない。
個人データが一元管理されていくが……
一方で、こうした未来では、個人の電話番号や顔データから、あらゆる個人のネット利用履歴や個人の移動履歴が管理されることも意味する。
現在中国では、信用ある社会を目指し、ネットサービスで素行不良だと「信用ポイントが減り、ゼロになるとサービスが利用できなくなる」が、「品行方正だと信用ポイントが上がり、一部ネットサービスで優遇や特典がある」という、信用ポイントのサービス「芝麻信用」がある。
こうした現状を拡張した先には、屋内外で無数に張り巡らされたカメラなどのIoT機器(カメラ以外では、すでにセンサーのついたネットにつながるゴミ箱もある。ポイ捨てすれば不利になるゴミ箱が出てきてもおかしくない)により、行動の多くが監視され、モラルが低いと何かと不利になる社会がやってくる。
例えば世界一の喫煙大国である中国で、禁煙へと流れが動きつつある中、喫煙可能な地域以外で煙草を吸ったらネットサービスの利用が不利になるかもしれない。また親孝行が美徳な中国で、老いた親と散歩するとネットサービスの割引クーポンがスマホに送られてくるといったこともあるかもしれない。外国人も例外なく、中国に入れば、治安維持のため、さまざまな情報が中国管理のクラウドに保存されていくので、他人事ではない。
2020年までに、中国は5G、IoT、クラウドコンピューティング、ビッグデータ、AIなどにより日々の生活が変化していく。それは突然ではなく、実験的なサービスが段階的にやってきて、人々は自然と受け入れていくだろう。近年、身分証明ともなる電話番号1つに、SNSから支払い、ゲームまで、ありとあらゆるネットサービスがひも付き、人々は違和感なく受け入れたのだから。
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