ひょっとしたら、白鵬は「悪役」を演じているのかもしれない:赤坂8丁目発 スポーツ246(4/4 ページ)
大相撲夏場所で、横綱白鵬が優勝した。最近は稀勢の里に人気が集中し、脇役になりつつあったが、さすがの強さを見せつけた。勝っても負けても、世間から批判の目を向けられる白鵬は、ひょっとしたら「悪役」を演じているのかもしれない。
モンゴル国籍にこだわる理由
最後に、白鵬がモンゴル国籍にこだわる理由について補足しておきたい。自身が「日本とモンゴルの架け橋になりたい」と述べているように、母国の有能な金の卵たちが将来的な帰化に抵抗を覚えて、日本の大相撲界に来たがらなくなってしまうような流れを防ぎたいとする考えを持っているからである。
一時期は余りにも勝ち過ぎてモチベーションを失いかけた。それでも今は魁皇の持つ歴代最多の通算1047勝を抜くことと、前人未到の40回V達成がダブル目標となっている。現在の通算勝利数は1036となっているだけに次の名古屋場所で12勝すれば記録更新だ。優勝回数に関してもあと2回で大台に到達する。
まだまだ強い向上心と情熱を失っていない白鵬は稀勢の里、高安ら人気者の日本人力士たちの台頭を喜ぶ半面、嫌われることも覚悟の上で彼らの高い壁として今後も立ちはだかり続けようとしている。もしかすると強過ぎて小憎たらしい「ヒール」と見られがちなのも、角界を盛り上げるために白鵬自身があえて織り込み済みでそういう姿に徹しているからなのかもしれない。
臼北信行(うすきた・のぶゆき)氏のプロフィール:
国内プロ野球、メジャーリーグを中心に取材活動を続けているスポーツライター。セ・パ各12球団の主力選手や米国で活躍するメジャーリーガーにこれまで何度も「体当たり」でコメントを引き出し、独自ネタを収集することをモットーとしている。
野球以外にもサッカーや格闘技、アマチュアスポーツを含めさまざまなジャンルのスポーツ取材歴があり、WBC(2006年第1回から2017年第4回まで全大会)やサッカーW杯(1998年フランス、2002年日韓共催、2006年ドイツ、2010年南アフリカ、2016年ブラジル)、五輪(2004年アテネ、2008年北京、2017年リオ)など数々の国際大会の取材現場へも頻繁に足を運んでいる。
関連記事
- なぜ浅田真央が好かれ、安藤美姫は嫌われたのか
女子フィギュア界の国民的ヒロイン・浅田真央選手が引退を表明した。多くのマスコミが大々的に報じ、その影響力の高さを改めて証明する形になったが、もうひとりの存在を忘れてはいけない。安藤美姫さんだ。 - スポーツ界で“オレ様”が減っている、なるほどな理由
結果を出す人と、出せない人にどのような違いがあるのか。オリンピック4大会に出場し、4つのメダルを獲得した、水泳の松田丈志さんに話を聞いたところ「周囲から応援される人は結果を出しやすい」という。どういう意味か。話を聞いたところ……。 - ボロボロになりながらも、引退しない松坂大輔の末路
かつて日米を沸かせた怪物伝説も、とうとう終焉の危機を迎えてしまった。福岡ソフトバンクスホークスの松坂大輔投手である。移籍2年目にして最後の最後でチャンスを与えられたが、結果は……。 - 野球評論家の張本勲氏は、なぜ失言を繰り返すのか
人気情報番組『サンデーモーニング』に出演している野球評論家・張本勲氏のコメントが、ネット上でしばしば“炎上”する。現役時代の張本氏は偉大な選手だったのに、なぜ失言を繰り返すのか。スポーツライターの臼北氏が分析したところ……。 - ミズノの作業用シューズが、実は売れている
現場の作業者などが作業中に履くプロテクティブスニーカーを、ミズノが発売したところ、当初計画を上回る売れ行きを示している。意外とも思えるヒット商品は、どのようにして誕生したのか?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.