日本の生産性が低いのは「たばこ後進国」だから?:スピン経済の歩き方(3/5 ページ)
数年ほど前から「日本企業の生産性が低い」といった話をよく耳にする。労働時間を短縮したり、効率化を図ったり、さまざまな取り組みをしているが、喫煙者の問題はあまり話題にならない。仕事中に「ちょっと一服」と言って、何度も離席する人は生産性がいいのだろうか。
喫煙と労働生産性の因果関係
2016年5月19日、世界保健機関(WHO)が発表した「世界保健統計2016」によると、日本の喫煙率は33.7%となっている。それに対して、生産性ナンバーワンのルクセンブルグは25.8%、アイルランドは22.4%、ノルウェーは22.4%、ベルギーは26.5%、そして米国は19.5%なのだ。
喫煙と労働生産性の因果関係は、日本より労働生産性が低い国を見てもうかがえる。例えば、23位のイスラエルは41.2%、27位のギリシャは52.6%、30位の韓国は49.8%という風に喫煙率が高い国ほど、労働生産性が低くなる傾向がみられる。
もちろん、労働生産性のすべてを「喫煙」に結びつけるのには無理がある。ただ、先ほどのオハイオ州立大学の調査からも分かるように、「たばこ休憩」の経済的損失というものは世界中で指摘されているのも事実だ。また、東京都医師会の尾崎治夫会長によると、「ニコチン依存症の人はニコチンが切れる前には生産性が落ちることが分かっている」という。つまり、喫煙者の生産性の低さを示すデータには事欠かないのである。
「たばこを吸う人の労働生産性がガクンと上がりました」なんて画期的な研究成果がでれば話は別だが、現状では日本の生産性がなかなか向上しないことの元凶のひとつに、「職場におけるたばこ対策の遅れ」があるというのはそれほど荒唐無稽な話ではないではないのだ。
そのようなことを言うと、「たばこ休憩」くらい認められない不寛容な社会は問題だとか、喫煙者の唯一の楽しみを奪って働かせるなんてブラックすぎるとかいう人がいるが、「たばこ休憩」の問題は非喫煙者らがとっている「ランチ休憩」や「コーヒー休憩」にオンする形で、「ちょっと一服」が何度も許されるという「優遇措置」にある。
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