ダイハツとミラ イースに問う:池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/4 ページ)
ダイハツは自らのブランドを再定義して「Light you up」というスローガンを策定した。これは主役は自動車ではなく人間であり、人の生活を明るく照らす自動車作りをするというダイハツの覚悟である。そうした中で新型ミラ イースに試乗して気になったことがいくつかあった。
問題はミラ イースでは従来のダイハツの文法より高まった初期応答性から予測されるほどにそこから先の横力が高まっていかない。グラフの角度が途中で変わるのだ。クルマを受け取った駐車場で、出口ゲートへ向けて左折したとき、初期のクルマの動きから予想した曲がり方と切り増したときの挙動が合わず、大回りになった。つまり切り増しでのアンダーステア感が強いということだ。別に飛ばしていたわけではなく、駐車場の中なので速度はせいぜい時速10キロ程度である。
ちなみにクルマが曲がるということは、最初にクルマがコマのように自転を開始し、次に、その自転速度を緩めてコーナー中心に対して公転運動に入る。このとき、緩まった自転速度と公転速度がうまくシンクロしている必要がある。ミラ イースの場合、最初の自転運動はキビキビとしているが、公転運動が始まった途端、自転運動が足りなくなる。
エンジニアの説明によれば、リヤの踏ん張りを増やしているとのことであり、それは公転での遠心力に対抗するのには好適だが、自転運動に関しては回転を止める作用が起きる。だからクルマの鼻先が入っていかない。つまり前述の大回りの原因は、リヤが踏ん張り過ぎているか、フロントの横力が足りないかのどちらかということになる。
これは欠点だとまでは言わないが、少なくとも良いものではない。つまりミラ イースはハンドリングの基本を従来の穏やかなダイハツの特性に置いたまま、初期応答だけを改善した結果、そのつながりに違和感が生じてしまっている。パワートレインの素晴らしいリニアリティと比べると残念ながら雲泥(うんでい)の差である。
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