ダイハツとミラ イースに問う:池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/4 ページ)
ダイハツは自らのブランドを再定義して「Light you up」というスローガンを策定した。これは主役は自動車ではなく人間であり、人の生活を明るく照らす自動車作りをするというダイハツの覚悟である。そうした中で新型ミラ イースに試乗して気になったことがいくつかあった。
真の「Light you up」のために
2017年の今、自動車の恩恵に預かれない人は誰だろう? 考えれば、免許を所持することが針のむしろになりつつある高齢者や、所得が少なくてクルマが買えない人たちだ。ダイハツはこうした人たちを照らすべきではないか?
中国では政府の新たな規制の影響で電気自動車メーカーが雨後の竹の子のように誕生している。当然、低所得者に向けた電気自動車もたくさんある。汎用のモーターに昔ながらの鉛バッテリーを組み合わせた、ある意味原始的な電気自動車は技術障壁が低いこともあり簡単に作れる。
恐らく日本最古の自動車メーカーであるダイハツの目から見れば取るに足りないものだと思うし、安全性にも疑念があるだろう。だったらそういうプリミティブな電気自動車をダイハツが安全性を高めて作ってみたらどうだ。もしかしたら革新的な価格破壊ができるかもしれない。新型ミラ イースの最廉価モデルが84万2400円。エンジンや変速機を取っ払って、廉価なモーターとバッテリーに置き換えたら、もしかしたら60万円くらいで商品になるかもしれない。低所得層には安価に、高齢者向けにはこれに安全支援装置をベンツも驚く最先端レベルに搭載して、現在のミラ イースと同等の価格で売る。きっと彼らを照らす光になるはずである。
ダイハツは真面目な会社だと思う。ただ真面目であるがゆえに、型を破るのが難しい。知らず知らずに常識に囚われて視野狭窄しがちなのではないか。「Light you up」はダイハツのトップが生き残りを賭けて考え抜いて生み出したコンセプトだと思う。それを血が通ったものにできるかどうかは全社員の意識改革にかかっているような気がしてならない。
筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
現在は編集プロダクション、グラニテを設立し、自動車評論家沢村慎太朗と森慶太による自動車メールマガジン「モータージャーナル」を運営中。
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