ネットを遮断された「英語圏」の地域は、どうなったのか:世界を読み解くニュース・サロン(3/4 ページ)
突然「インターネット」が使えなくなったらどうなるか? SNSやメールが使えなくなるだけでなく、金融や医療機関などでも大きな支障が出るはずだ。考えただけでも恐ろしいのに、実際に使えなくなった国がある。アフリカのカメルーンだ。どのような混乱が起きたかというと……。
これが「未来の抑圧」の姿
遮断によって、どのようなトラブルが発生したのだろうか。まず行政機関や学校などが利用できなくなり社会生活に支障が出た。経済的にも、銀行などがネットワークにアクセスできずに、ビジネスや個人の送金ができなくなり、市民が現金を引き出すこともできなくなった。また病院など医療分野にまでその影響は及んだ。
英BBC放送は、地元からのリポートで、コミュニケーションが滞り、ニュースにアクセスできないために、世界で何が起きているのかも分からないと嘆く地元民の様子を伝えた。またネットが遮断されたことで、まるで牢屋の中にでもいるかのように周辺地域や外部から孤立してしまっているのに、カネがないために移動すらできないという声もあった。
またアフリカのニュースサイトは、ある若い医師の声を拾っている。
この医師は、遮断前まではさまざまな疾患についての最新情報や処置方法を得たり、離れた場所にいる同僚医師らからのセカンドオピニオンなどアドバイスを聞くためにネットを日常的に活用していた。だが遮断されてそれができなくなり、数時間かけてネットがつながるフランス語圏にまで移動せざるを得なくなったという。メールをチェックするためだけに5時間も移動したことがあったらしい。そんなことから、「途中から、フランス語圏に暮らす友人たちにパスワードを教えてメールをチェックしてもらうようになった……プライバシーも何もなくなった」と取材に答えている。
そんな状況で英語圏地域の市民は「ネット難民」と化した。そして、彼らを受け入れるために「難民キャンプ」が設置されるという動きも起きた。英語圏からネット接続が可能な地域まで行くのはあまりにも遠く時間がかかるため、有志が英語圏からそう遠くないフランス語圏側の村にネットが利用できるスペースを提供した。
結局は、国際社会からの批判などを受けた政府が、3カ月後に英語圏のネット接続を再開した。ただ遮断されていたことによる経済損出の合計額は、少なくとも450万ドル(約5億円)にもなったと見られている。こうしたカメルーンの状況を見て、元CIAの内部告発者であるエドワード・スノーデンも、これが「未来の抑圧」の姿だ、とロシアからツイートした。
関連記事
- 実は怖い、インド便のトイレ
航空会社のトラブルが相次いでいる。男性が警察に引きずり出されたり、母親がベビーカーを奪われたり。いずれも米国の航空会社で起きたわけだが、客室乗務員によると「インド便で深刻な問題がある」という。どういうことかというと……。 - 中国政府がいま最も恐れているのは、ネット上の「くまのプーさん」
中国共産党がネット上の検閲に力を入れている。いわゆる「サイバーポリス」と呼ばれる工作員が反政府的な発言などをチェックしているが、2015年に最も削除された発言は……。 - 世界が販売禁止に乗り出す、“つぶつぶ入り洗顔料”の何が危険なのか
スクラブ製品が、世界的に注目されているのをご存じだろうか。私たちが何気なく使っているスクラブ洗顔料や歯磨き粉などの一部には、いわゆる「マイクロビーズ」と呼ばれるプラスチックの粒子が使われている。その粒子が……。 - なぜ「楽天」が世界中で叩かれているのか?
英語の社内公用語化など、グローバル企業への成長を目指して動き出した楽天。だが、本当に必要なのは「国際企業ごっこ」ではない。国際社会に対する社会的な貢献が求められる。 - 世界から「児童ポルノ帝国」と呼ばれるニッポン
衆議院で可決した「児童買春・ポルノ禁止法」改正案。日本では大きく報じられていないように見えるが、海外では大きな話題になっている。規制が強化された格好だが、海外メディアの反応は厳しい。その内容とは……?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.