閉店に追い込まれた温浴施設が若者から大人気になった理由:おふろcafe誕生秘話(2/4 ページ)
若い女性に人気の温浴施設「おふろcafe utatane」――。実は4年前までは年配の男性客が中心で、しかも赤字続きのスーパー銭湯だったという。おふろcafe utataneを運営する温泉道場の山崎寿樹社長はどのようにして施設を改革したのか。
ターゲットを年配男性から若い女性に
山崎社長が温泉道場を起業したのは2011年。もともとは、経営コンサルティングを手掛ける船井総合研究所で温浴施設の経営支援に携わっていた。温浴施設を担当してから4年目のとき、埼玉県にある温浴施設のオーナーから「山崎さんに経営を引き継いでほしい」と声を掛けられたことをきっかけに起業した。
おふろcafe utataneの前身となるスーパー銭湯を譲り受けたのはその2年後。起業時に引き継いだ1店舗目の売り上げを伸ばした実績を評価され、譲渡の話を持ちかけられた。
しかし、そのスーパー銭湯は課題が山積みだったという。
「当時、そのスーパー銭湯は集客に苦労し、赤字が続いていました。理由としては駐車場が狭かったことに加え、周辺の競合店と比べて浴室が狭く、お風呂の種類も少なかったことが挙げられます」(山崎社長)
まずは、商品のメインである浴室を改修する必要があった。しかし、予算は限られており、浴室の改修に費用をかけても競合施設と同じ程度のクオリティーにしか改善できない。正攻法で勝負しても競合に勝てる望みは薄かった。
そこで山崎社長は、男性中心だった顧客ターゲットを思い切って女性にシフトすることを考えた。
山崎社長によれば「男性は女性に比べて、浴室の広さやお風呂の種類に強いこだわりを持っているが、それに対して女性は『雰囲気』を重視する傾向がある」という。それならいっそ、浴室の改修には手を出さず、予算を共有スペースなど、浴室以外の空間に重点投資することで女性ユーザーを集めようと決断したのだ。
「浴室で勝負せず、空間で勝負すれば、うまくいくかもしれない。そこに賭けてみようと考え、施設を譲り受けることにしました」
関連記事
- “再び”「ポッキー」が急成長できた理由
横ばい状態が続いていた「ポッキー」の売り上げを5年間で50億円も伸ばしたチームリーダーがいる――。チョコレートマーケティング部の小林正典部長だ。彼はどのようにしてポッキーの売り上げを伸ばしたのだろうか。 - 甲子園で準優勝した仙台育英の監督がグラウンドに顔を出さない理由
今年の夏の甲子園で準優勝を果たした仙台育英学園高校。部員100人を超すチームをまとめるために、どのようなチームマネジメントを実践しているのか、仙台育英野球部の佐々木順一朗監督に話を聞いた。 - 「どうせ売れない」を覆した「もぎたて」大ヒットの理由
2016年に706万ケースを販売したアサヒビールの缶酎ハイ「もぎたて」。これまで、売れる酎ハイをなかなか生み出すことができなかった同社が、なぜ大ヒット商品を生み出せたのか。 - “大人”にも人気! 「ベイブレード」が再び大ヒットした理由
1999年に発売されたタカラトミーの玩具「ベイブレード」が、再び大ヒットしている。もともとベイブレードは男子小学生を対象とした玩具だが、20代男性を中心とする大人のユーザーからも人気が高いという。再ブームの仕掛け人に話を聞いた。 - 「ガリガリ君」の急成長と“大失敗”の舞台裏
1981年の発売以来、右肩上がりで販売本数を伸ばし続けてきたアイスキャンディー「ガリガリ君」――。年間販売本数をみると、2006年は約1億本だったが、2012年には4億本を超え、飛躍的に伸びている。どのようにして販売本数を伸ばしたのか。その仕掛けと、あの“大失敗”の裏側を同社のマーケティング部、萩原史雄部長に聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.