閉店に追い込まれた温浴施設が若者から大人気になった理由:おふろcafe誕生秘話(4/4 ページ)
若い女性に人気の温浴施設「おふろcafe utatane」――。実は4年前までは年配の男性客が中心で、しかも赤字続きのスーパー銭湯だったという。おふろcafe utataneを運営する温泉道場の山崎寿樹社長はどのようにして施設を改革したのか。
スタッフがおふろcafe utataneをデザインする
お風呂から上がった後も多数のコンテンツを楽しむことができ、まるで友人の家のリビングで過ごしているような体験ができるおふろcafe utatane。その空間を作り上げることができたのは、平均年齢が30歳以下の若いスタッフたちのアイデアがあったからだという。
「若年層のトレンドは変化が激しいので、ビジネスとしては難しい面もあります。私はいま35歳なので、まだ若い人の感覚についていけますが、今後は10〜20代の感性がどんどん分かりにくくなってきますからね。ですから若いスタッフの声を大切にしています」
山崎社長は、コンテンツの選定や配置場所、レイアウトなどの裁量を現場に持たせて、スタッフの発想を生かした店舗作りを実践していると話す。
「実際、カップルのユーザーが増えたきっかけは女性スタッフの『ちょっとエロい空間にしてみよう』という発想からでした。照明の明るさだったり、ちょっとだけ人目のつきにくいを空間を作ってみたり。あからさまに『カップル向けのスポットです』という感じを出さずに、自然と良い雰囲気を作ることができていますね(笑)。スタッフから発想が出てきたら、実際に任せてみることが大切です。いきいきと仕事ができますし、モチベーションを高めることにつながります」
おふろcafe utataneでは毎月、音楽ライブや季節イベント、ワークショップを共有スペースで開催しており、こうしたイベントコンテンツも若いスタッフが主体的に作り上げている。
山崎社長は「共有スペースにさまざまなコンテンツを持ち込むことで、おふろcafe utataneは単なる温浴施設ではなく、若いユーザーとスタッフが流行や文化を共有・発信する場所へと変えていきたいです」と語る。
「今、ほとんどの家にお風呂がありますので、昔と比べて外に出て入浴する機会がありません。しかし、新たに入浴施設の需要を開拓していかなければ、業界としては先細りになってしまいます。おふろcafe utataneが新たな入浴施設の形を提案することで、温浴業界全体を変革していきたいと思っています」
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