やっかいな「ダークツーリズム」に近づいてはいけない:世界を読み解くニュース・サロン(4/4 ページ)
北朝鮮で拘束されていた米大学生が解放された。ただ、その学生は意識不明のまま米国に移送され、その後死亡する。そもそも、なぜこの学生は国交のない北朝鮮に行くことができたのか。調べてみると、「ダークツーリズム」の存在が見えてきた。
北朝鮮への「旅行」は注意が必要
日本政府は、外務省海外安全Webサイトで、北朝鮮への渡航は、全土で「渡航を自粛してください」とし、こう指導している(参照リンク)。「北朝鮮が核実験や弾道ミサイル発射を繰り返しています。こうした状況も踏まえ、拉致、核、ミサイルといった諸懸案の包括的な解決のために我が国がとるべき最も有効な手段は何か、という観点から、一連の我が国独自の対北朝鮮措置を実施しています。その一環として、人的往来の規制措置、具体的には我が国から北朝鮮への渡航自粛要請が含まれています。つきましては、目的のいかんを問わず、北朝鮮への渡航は自粛してください」
北朝鮮に「旅行」するには十分な注意が必要になるということだ。
過去10年で16人の国民が拘束されている米国は、ワームビアが北朝鮮に向かった2015年12月末ごろは、「米国民は北朝鮮で、米国やそのほかの国では逮捕にならないような行為で逮捕されたり、長期間拘留されたりする」ために、「北朝鮮に渡航しないよう強く勧める」とアドバイスしていた。
北朝鮮は6月23日、「ワームビアが『敵国の犯罪者』であるにもかかわらず、医療措置を行うなど丁重に扱った」と主張する声明を発表した。敵地に乗り込んで行ったワームビアの一件から学べることは多そうだ。
筆者プロフィール:
山田敏弘
ノンフィクション作家・ジャーナリスト。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト研究員を経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。
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