ソルティライチが“変えたこと”と“変えないこと”:「世界のKitchenから」10年の歩み(2/3 ページ)
キリンビバレッジの「世界のKitchenから」シリーズの中で、ブランド全体をけん引する主力商品となった「ソルティライチ」。10年間、ブランドはどのように歩んできたのか? ヒット商品はどのような背景で生まれたのか? キーワードとなるのは「記録的猛暑」と「震災」だ。
発売から7年、ソルティライチはどう変わった?
“熱中症対策の塩入りドリンク”の代名詞的存在としても定着を果たしたソルティライチは、入れ替わりの激しい飲料業界において、発売7年目でも夏の果実飲料のトップを守っている。大ヒットし、メジャーブランドになっていった11〜14年のころは、上層部から「もっと売ること」を求められたこともあったという。
「あの時はつらかったです(笑)。ですが、『たくさん売ることが第1義ではないよね』と、最近はビジョンを上層部と共有できています。大事なのは、お客さまに必要とされること。今の世の中にはない“一段上のおいしさ”を目指して、ものづくりの姿勢において業界を引っ張っていくくらいになりたい。それはブランド当初からずっと変わらないですね」
この「ものづくりの姿勢」が表れているのが、リニューアルへの姿勢だ。ソルティライチを始めとし、世界のKitchenからシリーズは定期的に味のリニューアルやパッケージ変更などを行っている。その際、「もっとおいしくなる」「もっとコンセプトが伝わる」ことだけを重視するようにしているのだという。
「飲料業界は春秋の年2回、店頭の棚内で商品の入れ替えがあります。棚に置き続けてもらうために、その時期に合わせてリニューアルをすることは通例になっている。ですが世界のKitchenからでは、『リニューアルのためのリニューアルはしない』とよく議論しています」
それどころか、17年5月のリニューアルでは、味を変えず、パッケージをライチを前面に押し出したものに変更するのみだった。
「チームとしては、もっとおいしいソルティライチを作れると考え、味変更をする予定でした。ただ、何回もお客さま調査をした結果、これまでの味を支持する方が多かった。ある意味すごく光栄なことです。ソルティライチはもうわれわれだけのものではない。リニューアルを会社の都合でしてはいけないし、味を変えなくても必要とされ続けるのが大事。上層部も同じ感覚を持っていて、営業も納得してくれました」
“ソルティライチは自分たちだけのものではない”という考え方は、消費者とのコミュニケーションにも表れている。ソルティライチは16年に5倍濃縮タイプを発売し、「アレンジできる」「好きな濃さにできる」と好評だ。
開発のきっかけの1つになったのが、「ソルティライチソーダを出してほしい」といった、アレンジ商品を求める声だ。「ソルティライチシリーズを広げることはあまり考えていなかった」というが、さまざまなニーズに応えられる濃縮タイプを展開することになった。
「濃縮タイプは私も使ってみたかったということもあるのですが(笑)、ソルティライチを大好きなお客さんに“出来上がりだけじゃないもの”を届け、アレンジを楽しんでもらいたいという思いから作りました。自家製や素材と向き合うというキーコンセプトにも合っていましたね」
“アレンジレシピ”は公式WebサイトやTwitterアカウントで発信。ファンも自作レシピをTwitterなどのSNSに投稿し、大きな話題を呼んだ。図子さんのチームも「濃縮タイプで氷を作り、かき氷にして食べる」――といったレシピを楽しんでいるという。
濃縮タイプの展開には、「家庭に入っていきたい」と思いもある。
世界のKitchenからシリーズのファンは、10年間で変化してきている。08〜10年は、食に対して「よいもの」や「エンターテインメント性」を求める20〜40代女性中心。だが、ソルティライチが登場した11年に、一気に男性が増えたのだという。
「部活や営業周りなどのシーンで選んでもらえるようになったのか、10〜20代男性が増えました。今は30〜40代男性にも広まっています。個人的な感覚ですが、『いいものにはお金を出したい』という層は男性にも増えてきているのではないでしょうか。現在は外での飲用が多いですが、家庭の冷蔵庫の中にソルティライチが入るようにしていきたいですね」
関連記事
- 夏の定番ドリンク「世界のKitchenから ソルティライチ」に濃縮タイプが登場したワケ
キリンビバレッジ「キリン 世界のKitchenから ソルティライチ」に、5倍濃縮タイプの「キリン 世界のKitchenから お家で作ろう!ソルティライチ」が登場した。SNSで“オリジナルドリンクレシピ”が投稿されるなど消費者の反応は好調。なぜ濃縮タイプが発売されたのか、担当者に聞いた。 - 清涼飲料市場、成長 夏場の猛暑で需要増
富士経済が2016年の清涼飲料市場を発表。最需要期となる夏場に猛暑が続き、需要が上向いたことで、5兆1155億円(前年比1.6%増)になる見込み。コーヒー飲料、茶系飲料、ミネラルウオーター類が好調。 - スターバックス、「顧客満足」ランク外に
「JCSI(日本版顧客満足度指数)」の調査結果が発表。カフェ部門の顧客満足1位は3年連続でドトールコーヒー。スターバックスは上位4社から外れる結果に。 - だからミニストップの「ハロハロ」は売れている、知られざる“実験力”
ミニストップの「ハロハロ」が売れている。1995年に発売したロングセラー商品で、今年は7種類も投入する。同社は過去最高の売り上げを狙っているが、どのような人が購入しているのか。また、どのようにして開発しているのか。その舞台裏に迫った。 - 国内飲料メーカーの「営業体制」を比較 各社の強みは?
国内飲料メーカーの営業体制の違いは?――TPCマーケティングリサーチ調べ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.