DMMバヌーシーはリアル競馬ゲーム? DMMに直撃:1万円からの一口馬主アプリ(1/3 ページ)
DMMが一口馬主アプリ「DMMバヌーシー」をスタートし、競馬業界に参入する。どんなサービスなのか? どういった経緯で立ち上がったのか? なぜアプリ名は「バヌーシー」になったのか――DMM.com取締役の野本巧氏に直撃した。
7月10日に明らかになったネットサービス大手DMM.comの競馬業界への参入。1万円から出資できる一口馬主アプリ「DMMバヌーシー」を7月末にリリースする。
DMMは事業展開のため、7月10〜11日に開催された国内最大の競走馬競り市「セレクトセール」で、良血馬を続々と1億円超えの高額落札。11日に3億7000万円(税・保険込み約4億679万円)で落札を決めた際には、場内に拍手が沸き起こったほどだという。2日で約7億円の投資を行い、競馬業界のみならず、他業界からも注目を浴びている。
DMMバヌーシーとはどのようなサービスなのか? 企画はどういった経緯で立ち上がったのか? なぜアプリ名は「バヌーシー」になったのか? DMMとDMMドリームクラブ社で取締役を務め、事業を統括する野本巧氏に聞いた。
「ダビスタ」にハマっていた
――なぜこのサービスを企画したのでしょう。
学生時代に「ダービースタリオン」シリーズと「ウィニングポスト」シリーズにめちゃくちゃハマったんです。今も「スターホースポケット」にハマっていて、数万円ほど課金しています。こうした競馬ゲームは、馬と馬を組み合わせて良い馬が生まれたときに、すごく面白いんですよ。
ただ、競馬ゲームの楽しさはバーチャル体験。リアルの体験とはまた別だと感じています。良い馬ができて良いレースをしたとき、ゲームだったら「おお、来た来た!」くらい。でも、もし実際に馬主さんのように自分の馬がリアルのレースを走ったら「ウォーーー!」と大興奮すると思うんです。
競馬というコンテンツは大きなパワーを持っています。日本ダービーのような大きなレースでは、東京競馬場に10万人以上が集まります。全国のウインズ(場外馬券発売所)に集まる人を含めたら50万人くらいなのではないでしょうか。ライブで10万人呼べるようなコンテンツは、日本のアーティストなら10組もいません。
テレビでも各局がオンエアして、視聴率は全部足したら10%ほどでしょうか。「ダービースタリオン」などの競馬ゲームに熱狂したことがある人も含めれば、競馬に注目している層は1000万人を超えるはず。その一方で、個人馬主は2000人ほど。既存クラブ会員はもう少し増えて数万人程度です。それ以外の多くの人たちは「馬主になる」ということを考えたこともない。そうした人たちに「馬主と同じような感動体験の共有」を提供したいと考えたのが、企画の始まりです。
――野本さんはFacebookでサービスのテーマについて「投資やギャンブルではなくて感動体験の共有」と発言していますね。
サッカーや野球って、多くのファンが「おおー!」と盛り上がれますよね。サッカーチームのオーナーではないし、勝っても負けても自分にお金が入るわけではないのに、みんなが楽しんでいる。それは感動、熱狂、感情を共有しているからだと思うのです。競馬でも、同じようにこの感動を共有することを楽しむ人は既にいます。それがさらにレースのとき、購入者の仲間たちと喜びを共有することができれば、一人一人の熱狂が集まって、1万口分の1万倍になったらすごいことになるかもしれない。
当初は、できれば1口当たり3000〜5000円で申し込めるようにしたいと考えていました。スマホゲームで課金をする際、ゲーム内アイテムのゴールドをまとめ買いするくらいの負担にしたかった。ただ、現時点では1万口が限界でした。
――安い馬を買えば、より安く一口馬主になれるとも思いますが、セレクトセールでは高額落札が続きました。
そうですね、競走馬は安ければ200〜300万円くらいで購入できます。ただ、それが走る(レースで結果を出す)かというと、データで見る限り可能性は低い。もちろん、高ければ走るというわけでもないのですが、1億円未満の馬と1億円以上の馬とで比較すると、獲得賞金は2倍以上の差が出てきます。
また、僕のような競馬の知識が浅いファン層でも「この馬の兄弟の名前を知ってる!」「種牡馬が知ってる馬だ!」と身近に感じられる馬がいいと思いました。僕は、馬券を頻繁に買っているわけではないし、馬の血統についても詳しくないんです。僕が知っている馬は、必然的に金額が高くなってきます。
――知名度が高い馬の血統を持つ馬は、競りでも非常に高くなりますね。
DMMバヌーシーを「投資やギャンブルではなく」と思っているのは、馬券を買うことと競走馬を買うことは全く違うものだと考えているからです。高額購入金額と最高獲得賞金額とを比較すると購入金額を上回る確率は低いにもかかわらず、それでも馬主さんが購入されるのは夢とロマンと感動体験に投資されているのではないかと考えています。つまりそれだけの価値があるのではないかと。
競走馬ファンドは金融商品ですが、資産を増やすための投資としては考えないほうがいいと思っています。元本を割る可能性も高いですし、競走馬としてのデビューができなかったり、けがをして早期引退をするリスクもあります。「自分の馬がレースに出たらどんな気持ちになるだろう」という興味を持っていただけたらいいなと思います。
――ネットでは「一口馬主というよりもクラウドファンディング的なサービスだな」という声もありました。
それは近いですね。ただし、単なる応援の寄付型のクラウドファンディングではなく、賞金の配当があるので、配当型のクラウドファンディングに近いかと思います。
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