日本生命、AIを活用した営業支援で実現したいことは?:保険業界の先陣走る(1/2 ページ)
全国約5万人の営業職員の提案力を高めて売り上げアップを図るため、さまざまな手段で支援してきた日本生命保険。このたびAIを導入して実現したいこととは?
特集「営業部 AI課」:
AI(人工知能)に自分の仕事が奪われるかもしれない――。あなたはそんな不安を感じていませんか?
20XX年、オフィスにはAIがあふれ、公園には失業者があふれる日がやってくるのか。答えは「否」である。AIをうまく活用することで、いまよりも生産性を引き上げることが可能なのだ。
「そんなことを言われても、イメージができないのでよく分からないよ」と思われたかもしれないが、心配無用である。本特集「営業部 AI課」では、最新の事例を紹介しながら、私たちのこれからの働き方も提案していく。
いまを知り、これから鍛えることで……。「AIと一緒に働くことが楽しい!」そんな日が必ずやってくる。
生命保険の営業スタイルが大きく変わりつつある。かつては生保レディーが人海戦術でオフィスや家庭などに飛び込み営業して顧客をつかまえるようなやり方が一般的で、そこでの営業成績は経験の差が大きく影響した。
もちろん、そうした慣習は残っているが、一人のトップセールスだけが活躍すればいいということではなく、もっとインテリジェンスなやり方によって営業全体を底上げしようというのが昨今の動向である。
そうした取り組みを強化しようと、大手保険会社の日本生命保険はこのたび営業支援に人工知能(AI)を活用し始めた。
営業職員の顧客訪問前にアドバイス
同社は2012年に営業職員向け端末「REVO」を導入。これは顧客の名前や住所、勤務先、契約情報、営業活動履歴などのデータ管理に加えて、新規契約の申し込み、保険金や給付金の請求、住所変更などの各種手続きができるといったもので、現在は約5万人の営業職員が日々活用している。
2年前にはREVOの機能を改良。それまではバラバラだった上記の各種情報を1つの端末画面に集約、表示できるようにしたほか、営業職員が最適な顧客提案できるよう、次に取るべきアクションを具体的に指示したアドバイスメッセージを本部から配信する「訪問準備システム」を搭載した。
訪問準備システムとは具体的に、約1000万人の顧客情報を統計分析することで、約500に細分化した顧客セグメントごとの加入傾向やニーズを抽出。このデータを基に、顧客に合わせて2000種類ほどの最適なアドバイスメッセージを表示する。
メッセージの内容は、顧客にアポイントを取るときの切り口から、既契約者に対するヒアリング項目、提案プランなどさまざまで、営業職員一人一人にある程度カスタマイズしたのが特徴である。これによって、たとえ営業経験の浅い職員であっても、指示に従って顧客提案などができるため、営業レベルの標準化が図られるというわけだ。
「それ以前は、営業職員あるいはそのマネジャーの経験によって次のアクションを決めていました。それではどうしても提案にばらつきが出てしまいます」と、日本生命保険 商品開発部の渡部祐士営業開発課長は同システムのメリットを説明する。
人力の限界
ただし、看過できない問題があった。基本的に商品開発部のスタッフが人力でメッセージを作るため、それにかかる時間や労力などの負荷が重かったのだ。当然メッセージは適当に作ることはなく、営業経験のある社員にヒアリングして、知見やノウハウを取りまとめ、それをテキストに落とし込む必要がある。
もう1つは、さまざまな顧客や情報があるため、それらの組み合わせパターンは何千、何万種類にも上り、そこから最適なアドバイスを導き出す分析をするのは、人の力では限界があった。「ヒアリングからメッセージの作成、さらにはシステムへの入力まですべて手作業だった一方で、分析するデータ量はどんどん増えています。人力では無理が生じていました」と同部 商品開発グループの井上晴雄課長補佐は打ち明ける。
さらにアドバイスの内容についても、営業現場の知見を基に作られているので、それが間違っていることはないが、もっと精度を高められることができるのではないかという疑問があった。
こうした課題を解決するため、同社が選んだ手段がAIである。
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