なぜ渡辺謙さんは「不倫謝罪会見」をこのタイミングで開いたのか:スピン経済の歩き方(1/5 ページ)
7月15日、俳優の渡辺謙さんが「不倫謝罪会見」を開いた。4カ月も逃げ回っていたのに、なぜこのタイミングで会見を開いたのか。背景にさまざまな大人の事情がからんでいて……。
スピン経済の歩き方:
日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。
「情報操作」というと日本ではネガティブなイメージが強いが、ビジネスにおいて自社の商品やサービスの優位性を顧客や社会に伝えるのは当然だ。裏を返せばヒットしている商品や成功している企業は「スピン」がうまく機能をしている、と言えるのかもしれない。
そこで、本連載では私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」に迫っていきたい。
3連休が始まった7月15日、俳優の渡辺謙さんが「不倫謝罪会見」を開いた。
会見をご覧になった方はよく分かると思うが、報道陣は思いのほか謙さんに対して優しく、笑い声まで起きていた。4カ月も逃げ回っていたあげくの「報道は概ね事実です」という白状にもかかわらず、ワイドショーの論調もマイルドで、これまで「ゲス不倫」でバッシングを受けた芸能人はなんだったのかというくらい友好的だった。「すべての質問にしっかりと答えていて完璧だ」なんてもちあげるコメンテーターもいた。
この背景にあるのは「世界のケン・ワタナベ」の名声か、所属するケイダッシュの「プロデュース力」なのかというのは、ぜひ心ある芸能記者のみなさんに分析をしていただくとして、企業などの報道対策を生業としている筆者が、なによりも注目したのは「タイミング」である。
なぜ「文春砲」から4カ月も経過した今、不倫の事実を認めるためだけに会見を催したのか。
正直、毎月のように「ゲス不倫」が報じられているのでこの話自体を忘れていた人も多い。このまましれっとフェードアウトして自身の主演作とかの制作発表に合わせて、「少し前はいろいろお騒がせしましたが、既にこの問題は夫婦間で話し合いをして解決してます」とアナウンスするというやり方もあったはずだ。
実際、企業の中には即座に謝罪会見を開くほどではないビミョーな不祥事、責任問題が複雑に絡み合った案件などの場合はとりあえずスルーして、再発防止策や問題解決への動きとともに、決算発表や定例会見などのタイミングで初めてアナウンスをする、というダメージコントロールを行なう会社も少なくない。
お相手の方との関係は解消したものの、奥様の南果歩さんに許してもらったわけでもない。さらに、謙さんが公の場で仕事関係のアナウンスをしなくてはいけないタイミングでもない。単に4カ月前の報道が「概ね事実です」ということを言うだけのために、マスコミの前に現われるのは危機管理のセオリーからするとまったく理にかなっていない。
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