なぜ渡辺謙さんは「不倫謝罪会見」をこのタイミングで開いたのか:スピン経済の歩き方(5/5 ページ)
7月15日、俳優の渡辺謙さんが「不倫謝罪会見」を開いた。4カ月も逃げ回っていたのに、なぜこのタイミングで会見を開いたのか。背景にさまざまな大人の事情がからんでいて……。
し烈な「情報戦」を繰り広げている
もちろん、ワイドショーではそのようなこみいった話は扱わない。宮根誠司さんが司会を務める『Mr.サンデー』に松居さんが出演させてくれと訴えてもスルーしたように、テレビの世界では、松居さんはもはや大手事務所ホリプロにケンカを売って、この世界の「暗黙のルール」が通用しない「ヤバイ人」という扱いなのだ。
とはいえ、「数字」もそこそことれるのでワイドショーとしても、「ヤバイ人」を完全に無視するわけにもいかない。そんな痛し痒しの状況のなかで、この連休で松居さんの露出量がガクンと減った。そう、謙さんの「不倫謝罪会見」である。
「都合の悪い話」をふれまわる人から大衆の目をそらせるには、その人よりももっと有名で、もっと話題性がある人をぶつける、のは「情報戦」の基本だ。
ちなみに、南果歩さんは、ホリプロのグループ会社であるホリ・エージェンシー所属タレントである。もしあれが「南さんための会見」だったとするのなら、それは大きな意味では、「ホリプロのための会見」でもあったということだ。
謙さんが「松居一代さん騒動」の最中に会見をしたのは、松居さんと船越さんの泥沼バトルと比較されて、「あっちと比べたらまだまし」という印象になるからではないかと分析をしていたコメンテーターがいた。確かに、謙さんサイドからすればそういう「狙い」もあっただろう。
ただ、そうなると遠回しに「松居一代さん騒動」ついてのコメントを求められ、「穏便に解決してくれたらいいんじゃないかと思う」なんて口走ったことが不可解でしょうがない。
口をすべらせたというのは考えずらい。時期的にも必ず出る質問だ。あれは謙さんサイドが関係各位と調整してつくったオフィシャルな回答なのだ。あれほどそつのないマスコミ対応をしてきた謙さんサイドが、なぜ松居さんの行動を諌(いさ)めるような「誘導」をしたのか。南さんの仕事を応援する目的で言えば、「今の私がなにか言える立場ではありません」としておくのがベストであることは言うまでもない。
「世界のケン・ワタナベ」が芸能界のガバナンスを揺るがす「ヤバイ人」にあえてケンカを売ったのは、いったい誰の顔色を「忖度」してのことなのか。
「黒い権力」かどうかは定かではないが、松居一代さんが何者かを相手にし烈な「情報戦」を繰り広げていることだけは間違いないのではないか。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで100件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
著書は日本の政治や企業の広報戦略をテーマにした『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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