「時差Biz」を成功させるために必要なこと:常見陽平のサラリーマン研究所(1/2 ページ)
東京都が2017年7月11〜25日にかけて実施した「時差Biz」――。満員電車を解消するためには何が問われているのか。
東京都は2017年7月11〜25日に「時差Biz」を実施した。通勤時間を調整することで、電車の混雑を解消するための取り組みだ。約260の企業や自治体などが参加を表明した。
この「時差Biz」という言葉を聞いた瞬間、うさんくさいと思った。「プレ金」にも通じる、偽善を感じてしまったのだ。
早朝に出勤しても、早く退社しなければ長時間労働につながるだろうし、遅い時間に出勤すると退社時間が遅くなる。取引先との関係もあるし、家族との食事、保育園への送迎の問題もある。時差Bizを盛り上げようにも、ノレない要素がいっぱいだ。
「新しいムーブメントを起こせば、世の中が変わる」なんてことを言い出す意識ライジングな人もいるが、そのムーブメントを起こすのは簡単ではないことに、多くの人が気付いている。
首都圏の満員電車問題が簡単に解決できない理由の1つは、東京都の人口が増え続けていることだ。東京都は毎年、約10万人ずつ人口が増えている。居住者だけでなく、出張や旅行で訪れる人も多数いる。根気強く、継続的に取り組んでいかなくては到底変化など期待できない。
そういう意味で、今回の時差Bizの取り組みが夏の2週間だけで終わるのは残念だ。もちろん、夏の満員電車は過酷だ。この時期に絞ってやる意味はあるだろう。だが、一夏のキャンペーンではなく、年間を通じた実施にこそ意味がある。働き方改革の大合唱も始まっているし、ここは頑張りどころではないか。
それと同時に、テレワークの推進や移動手段をどうするかという議論も必要だろう。テレワークは新しそうで、古くから続いている取り組みである。現在は育児や介護と両立するための取り組みという意味合いが強いが、今後はいかにその対象を広げるかが問われる。
もっとも、情報の持ち出しに対する社内の規制や、その環境作りのための投資ができるかが課題となるのだが。
そう。働き方改革系の課題は結局、そのための投資ができるかどうか、あるいは日本の労働の根本的な問題である仕事の絶対量や役割分担などにどこまで踏み込むことができるかが問われている。著者の最新作『なぜ、残業はなくならないのか』(祥伝社)でも指摘したが、根本を解決しなければ、掛け声だけで終わってしまうのだ。
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